戦争は駄目!!

「雲の…空の国を、救って欲しい」


「はい!?」


「トルディーナ、君は、地球がおかしい状況にある事を感じなかったか?」


「え…あ、そう言えば、ニュースで色々言ってたような…」


「それは、全て、俺の父、サンドハードが雲の国の重鎮5人と共に、反乱を起こしたのだ。俺は今、16歳だ。後2年すれば、俺が成人となり、国王の座を受け継ぎ、雲の国を支配するはずだった。しかし、サンドハードは、俺が国王となった俺が、人間の味方をするのだろう、と言い、空の国を、雲の国を、あんな人間どもの好き勝手にはさせない、と怒り、5人の重鎮と反乱を起こしたのだ」


「それが…地球で起こっている、異常気象と関係があるの?」


「その通りだ。ようやく話が通じるようになったな…」


そうアイオは溜息に近い息を吐いた。


(転生だの、雲の国だの、空の姫だの、言われて、いきなり全部を信じて、呑み込めって方がどうかしてるわよ!!)


トルディーナは、そう、心の中で怒りを爆発させた。


「で?私はどうすれば良いの?」


腹がねじくれたトルディーナは、冷たく、ぶっきら棒に、プイッと顔を背けて、それでも、仕方なく、アイオに聞いた。


「説得して欲しい。雲の国の重鎮と、サンドハードを!」


「はい!?」


「空の姫は、雲の国の国王よりも強い力を持っているのだ。だが、トルディーナの前の空の姫、カトレーヌ様を、夜襲した。カトレーヌ様は、100年以上、空の国を守って来られた立派な方だった。それを、あのサンドハードが………」


ギリッと、アイオは悔しそうに歯ぎしりをした。


「で、でも…説得って…その100年以上空の国を守って来たって言うカトレーヌ様って人が出来なかった事を、こんな、只の転生してきただけの私に出来るの?」


不安しかない。そんな、説得?何をどうやって?学校の成績だって、下の中の私に、空の姫として、雲の国の重鎮を説得!?


もはや、トルディーナの頭の中は混乱以外の何物でもなかった。


「わ…私に、出来るでしょうか?」


「君にしか出来ない」


真っ直ぐな言葉に、どうしようもなく、動けなくなった。


やるしか…無いのか…?





「とにかく、作戦会議だ。どう、重鎮たちを説得するか、話し合おうぞ。トルディーナ」


「…はい…」


トルディーナは、完全に諦めた。






「サンドハードは、口で何を言おうと、聞かない性格の持ち主だ。力でねじ伏せるしかない。サンドハードを倒せば、重鎮たちは、空を総べるトルディーナの言葉を聴かない訳には行かなくなるだろう」


「ち、力でって…争う…って事?」


「当たり前だ」


なんの躊躇もなく、アイオはきっぱりと言いきった。


「そ、そんなの、駄目だよ!!」


トルディーナは、咄嗟にそんな言葉が口を吐いた。


「…?何故だ?トルディーナ、君が元居た地球の国々を苦しめていたのは、サンドハードと、それに仕える重鎮たちだ。そんな奴ら、ぶちのめさないでどうすると言うのだ」


「……そんな事…よく…分からないけど…、私は、頭が悪いから、よく、説明できないけど…、でも!争いは…戦争は良くない!!おまけに、相手が父親なら、話し合いで何とかするべきよ!!」


「話し合いで、納得するような奴らだと思っているのか!?」


「そんな事分からない!!でも、絶対戦争は駄目!!」


強い、涙目のトルディーナの瞳に、何故、爽嬉と言う娘が、トルディーナとして転生したのか、何となく、分かるような気がした、アイオだった―――…。

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