空の姫

「ハイセル、もう良い。俺から、話をしよう」


「これは…アイオ様…サンドハード様とは、もう…」


「あんな分からず屋の石頭!もう父とは思っていない!!」


アイオ様、と呼ばれた男は、多分、さっきハイセルさんが言っていた、様だ。何とも言い難い格好よさだ。髪型は、センター分けで、前の髪だけ蒼い。そして、つい引き込まれそうになる、濃いピンクの瞳。それは、一瞬、朱色にも見えた。…そして、サンドハード様…とは、この言い方からして、間違いなく、アイオ様と言う人のお父様だ。そして、何やら、その父親に対して、怒りに満ちているようだ。





「あ…の…」


入りにくい空気の中、私は、勇気を出して入って行った。


「あぁ…すまん。トルディーナ。俺は、アイオ。雲の国の王子だ。そして、今、話が聴こえていただろうが、君にどうしても止めてもらいたい争いがある」


「え?何も聞いてませんけど。争い…なんて…」


「あぁ…そうか、今、君が聞いていたのは、サンドハード…俺の父親の名だったな…。何とも腹の立つ父でな…。このままでは、地球が危ないのだ」


「地球が…危ない…?…あのぉ…私、まだ、転生したのも、帰れないって言うのも、トルディーナって名前つけられたのも、納得して無いんですけど!」


最初は、小さな声で反論しようと思ったが、だんだん腹が立ってきて、最後には叫んでいた。


「済まない。君は、もっと人間界で人間としての人生を謳歌した後で転生させるつもりだったのだ。しかし、サンドハードのせいで、そうもいかなくなってな…」


「だから!私は関係ないですから!!帰してください!!」


「…それは無理だ…。もう、君は、なのだから」


?なんですか?それ」


「俺は、さっき言った通り、雲の国の王子、アイオだ。その雲の国の国王が、我が父である、サンドハード。そして、雲の国には、5人の重鎮がいる。『晴』のソーレ。『雨』のピョーチャ。『雪』のネーベ。『雹』のサルヴェ。『雷』のトゥオーノ。この5人だ」


「はぁ…」


私は、もう半分諦めた。こんな事、こんな長い夢、あり得ないし、こんなにの話をされたら、認めざるを得ないだろう。…と言う結論に至った。


「とうとう、信じたか?トルディーナ」


「あ…は、はい。ト、トルディーナと言う名前には…まだ、慣れないんですけど…、呼び方、変えていただくわけには…」


「それは出来ない。トルディーナは、空の姫の名前。君には、空の姫として、どうか、サンドハードを止めて欲しいんだ」


「え…じゃあ、今、空の姫…っていないんですか?」


「サンドハードに殺されたのだ…。雲の国が空の国まで、すべて総べる為に…。その為、予定にはなかった君を、転生させると言う方法を取った」


「わ、私、その…空の姫に…なれるんですか?」


「なれるも何も、もう、トルディーナ様は空の姫様でございます」


ハイセルは、とんでもない事を、さらっと言って見せた。


「えぇ!?でも…、な、何をすれば…」


腰が引けるトルディーナ。そして、アイオの口から示されたその任務とは、もはや、信じがたいこの状況に輪をかけて、信じがたいものだった―――…。

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