サラ 対 佐々木

 次の相手は、西高の佐々木だ。

 短髪のツンツン頭で、糸目の汗っかき。

 特筆すべきは、横に長い体か。


 関取みたいな男子だった。


 身長はサラの方が高く、額一つ分しか変わらない。

 枠の中に入って早々、サラはある事を警戒した。


(おっきい。たぶん、押してくるだろうな)


 相手の体格からして、力は相当強い。

 まともに受ければ、確実にサラの方がバランスを崩される。


 枠の中に入り、互いに見合って蹲踞。

 サラが赤のゼッケンで、佐々木が白のゼッケンだ。


 相手をジッと睨み、「どうするかな」と頭の中で策を練る。

 イメージとして瞬発的に絵を浮かべたサラは、実のところ、いくつか戦い方が思いついているが、問題は相手がどう出てくるタイプか、で全てが決まる。


「――はじめッ!」


 立ち上がって、互いに気合を叫んだ。


「オアッ!」

「ルアアアアアッ!」


 オットセイのような気合を叫ぶ佐々木は、大きく振りかぶって面を狙ってくる。一見すると、隙だらけで簡単に取れるように思えたが違った。


 咄嗟に竹刀を斜めにして持ち上げ、打突を受け止める。


(う、わ!)


 超重いのだ。

 ベチン、と打突を受け止めた竹刀が、思いっきり下がり、竹刀で受け止めるだけでは足りなかった。


 すぐに反応を示したサラは、首を傾けて相手の打突をかわす。

 これで終わりじゃない。

 肩に圧し掛かる重量が重すぎて、サラは歯を食いしばった。


 *


 國井は観客席から見て、拳を握り締める。


「だよなぁ。そうなんだよ。女にとって、最大の課題は力でくるタイプなんだよ」


 簡単に取れそうで、実は厄介。

 カウンターを狙って、竹刀を斜めに構えても、面白いように力負けで下がってしまう。


 面を打った相手は、勢いのままに突っ込んでくるので、鍔迫り合いに持ち込まれるのは目に見えていた。

 相手の脇を抜けたいところだが、面積が広すぎるため、絶妙に体の端が突っかかる。――打突が浅く終わってしまうのだ。


「サラ。タイミングだぞ。今はミスったけど。タイミングが重要なんだぞ」


 カウンターを狙って、一本を取る。

 一本取れば、戦況は覆る。

 相手にプレッシャーが掛かるため、確実に相手は慎重になるはずだ。


 祈る気持ちで、國井は手を組んだ。

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