サラ 対 品沢
サラは赤のゼッケンを背中で交差している胴の紐に括りつけ、壇上側から二番目の枠に移動した。
その様子を石巻は二階から観戦。
腕には冷却スプレーを吹きかけ、痛みを紛らわせている。
(あ……。あの人、同じ女子の)
石巻は落ち込んだ様子で試合を見ていた。
ボブカットの髪型に、白い肌が特徴的な女子だ。
傍から見れば、本当に可愛らしい日本女子であるが、可憐であるからこそ意地の悪い男子からはイジメられていたりもする。
あっという間に終わった自身の試合に不甲斐なさを感じ、「早く帰りたい」としか考えていなかった。
それでもサラに注目をしたのは、同じ女子だからだ。
加えて、顔立ちがくっきりとした外国風の顔立ち。
身長は高くて、道着姿が似合っていた。
サラは脱げば肉のおうとつこそ目立つが、背が高い分、体を包む道着にやや広がりのある袴を着せると、頭から足に掛けてシュッとしていた。
シルエットが細く見える上に首が長く、面を付けていても、かなり整った見た目をしていた。
だからか、無性に気になってしまうのだ。
(カッコいいけどさ。女子じゃ男子には勝てないって。ルールがおかしいもん)
生徒からしても、男女混合のルールは狂っているとしか思えない。
その圧倒的に不利な状況の中で、静かに佇む長身のサラへ哀れむような眼差しを向けた。
一方で、サラは習った作法を自然とこなし、一礼して枠の中に入る。
相手は頭一つ背が低い。
腕は短く、作法に乱れがあった。
ダルそうに礼をして、中に入ってくると、白線の前で竹刀を構える。
(女子じゃん。ラッキー)
舐め腐っている品沢は、二回戦に進む自分の姿が見えた。
互いに蹲踞をして、竹刀の先端を向け合う。
「――はじめッ!」
審判の合図が、サラの脳みそにバチっと電流を流した。
蹲踞の姿勢から立ち上がり、品沢が一歩だけ近づく。
小手を狙うつもりだった。――が、遅かった。
一歩近づいた頃、サラはとっくに品沢の竹刀を越した所に体があったのだ。
「めェエアアアアアアアアアッッ!」
よく通る声だ。
会場の喧騒を全部吹っ飛ばし、サラの掛け声が全員を飲み込む。
竹刀が衝撃で撓る音に加えて、厚い布地からは弾けるような高い音が鳴った。
「……は?」
審判は赤の旗を一斉に上げる。
三人いる内、二人か三人が上げれば、どちらかの勝利となる。
この時、審判は三人とも赤の旗。
二階で観ていた石巻は、絶句。
「……はや」
一言漏らすと、腕の痛みを忘れて、つい釘付けになってしまう。
開始三秒。――面あり。
誰も反応できなかった。
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