同好会一名
学校では女子がズボンを履く事ができるようになった。
これは選択式なので、履きたい人は履ける。
サラの学校でも一定数がズボンを履いていた。
その中、サラはスカートを選ぶ。
脛まである、丈の長いスカートを注文し、常に袴に近い恰好をしている。こうすることで、下半身に違和感を与えず、オンオフの切り替えをしないように、と考えたためだ。
「おはよう」
「おはよ」
中央高校は駅から東に徒歩五分。
元女子高なので、圧倒的に女子の人数が多い。
これは時代関係なく、共学になった今でも、男子の全体数は五人しか入らないというのが現実であった。
そして、サラは同性であるにも関わらず、一人で桜並木の道を歩く。
(う、うぅ。みんな、友達できてる)
春を迎え、高校入学を果たし、四月の下旬になった。
サラは相変わらず、ぼっちだった。
トボトボ歩く姿は、まるでどこかのお嬢様のようで気品に溢れている。
剣道で身に染みついた姿勢の良さのためだろう。
喋る時にどもることはなくなったが、代わりに無口になってしまった。
悪化といえば、悪化。
何も言わずに相手をジッと見てしまう癖ができてしまい、周りは反応に困って、「じゃ、じゃあね」と遠ざかってしまう。
(いいもん。剣に生きるから、寂しくないもん)
本当は友達が欲しかった。
*
サラはホームルームが始まる前に、職員室へ寄った。
職員室に入ると、真っ直ぐに真ん中の席に移動する。
そこには残念美人の先生がいて、サラはカバンから出した申請書を出す。
「先生。申請書書いてきました」
「んぇ?」
気だるげなOLといった風貌、赤城先生である。
同好会に名前を貸すだけという約束で、サラが何とか粘ったのだ。
専門的な指導はないから、赤城先生は教える事ができない。
その店は道場の竹内が指導するということで、こちらも名前を貸してもらうだけ。
大会に出る準備が着々と進んでいた。
「あぁ、はいはい。確かに、承りました」
「じゃあ」
「更木さん」
呼び止められ、サラが振り返る。
「本当にいいの? 今時、剣道なんて。女の子がやるのは危険だって聞いたわよ」
以前までは、女子がやる事に何も言われなかった。
でも、男女混合になってからは、女子の数が激減。
怖くて、臭いし、辛いだけの苦行というイメージが付いてしまっている。
だから、剣道をやる女子はよっぽどの変わり者といった扱いになっていた。
それは学校の中ではない。
世間からも同様の目で見られる。
「更木さんの場合、背が高いからバレーとか向いてると思うんだけどな」
「球遊びは、ちょっと」
サラがへらっと笑うと、近くにいたバレー部の顧問が「ん”ん”っ」と咳ばらいをした。
「す、すいません。あ、それと、赤城先生。総体に出るので、申し込み忘れないでください。お願いします」
「あいよ」
渡した申請書をひらつかせ、赤城先生はホームルームの時間まで、机に突っ伏して寝ようと早速意識を失う。
サラは嘆息して、職員室を出て行った。
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