高校デビュー

三年後

 サラが道場に通って、三年の月日が経った。


 六畳半の部屋は、以前と違い、綺麗に片づけられている。

 物は少なくて、ベッドの隣にはテーブルと本棚。

 そして、剣道に使う防具が一式置かれている。


 青色の掛け布団の中で、7時だというのにサラはまだ眠っていた。

 見かねた妹が部屋に乗り込んでくると、布団の膨らみを揺さぶって、大声を出す。


「お姉ちゃん。朝だよ!」

「うぅ、まだ寝る」

「ダメだよ。先生に怒られるよ」

「……ねっむ」


 仕方なく起きたサラは、締まりのない顔で布団から出てきた。


「はい。おはよう。顔洗ってね」

「うん……」


 モソモソと布団から出てきて立ち上がるサラ。

 三年前とは、別人になっていた。


 身長は180cmまで伸びた。

 以前とは違い、肌のかさつきはなくなって、卵のように潤った。

 横幅のあった体は、度重なる厳しい稽古で引き締まり、えげつないほどのクビレを持つようになった。


 ただ、デブだった時の名残で、胸と尻だけは、どうしても肉が大きい。

 贅肉がしぼんだ分、サラは筋肉を付けて、皮を張らせるようにしているのだが、陸上選手のように皮が突っ張る肉体ではなかった。


 ようするに、浮き出ないだけで、皮の下には筋肉がちゃんとある、といった隠すような体型だ。


 無駄な肉が落ちたことで、腫れあがっていた瞼はパッチリとしている。

 綺麗な二重瞼に変わり、中には水晶のように透き通った青い目。

 ボサボサの髪はクシで整えて、襟足を結ぶことで一本に束ねた。


 手足は長く、見た目は高校生と思えないほど大人びた。


 本人は無自覚だが、かなりの美人に変貌していた。


「今日は先生に申請書出さないと」


 サラの通う中央高校には、剣道部がなかった。

 だから、申請書を出して同好会を作る必要があった。

 先生には名前を貸してもらうだけでいい。


「あ”あ”、師匠にやられた尻が、くぅ、いったい」


 尻を擦りながら、サラは洗面所に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る