第5話:アイドルグループ『ルーン』の誕生!




 「よーし、みんな揃ったわね!」


 「あの、お姉ちゃん……っ。私一人、場違いな気がするんだけど」


 「りん、大丈夫よ!アンタも聞かなくちゃいけないことだからね!」



 放課後、綾人くんと俊介の三人でゴールドスターの事務所へ向かった。


 もちろん、俊介はすでに全国に顔が知られている人気者だから、公共機関は使えず、事務所の許可を得てタクシーでここまで来た。


 実力派イケメンと、圧倒的なビジュアルを兼ね備えたイケメンに挟まれて乗ったタクシーの居心地の悪さと言ったら……。




 「はーい!どうして僕がここに呼ばれたのか知りたいです!」


 事務所の七階、『会議室三〇二号』と書かれたこの部屋に入ると、そこにはお姉ちゃん以外にもう一人、かわいい男子が待っていた。



 「まず自己紹介からするね!」

 お姉ちゃんはそう言って、最初に俊介をゆび指した。



 「この背の高いぶっきらぼうなイケメンが、里見俊介ね」


 「誰がぶっきらぼうだ」



 そのとおりだ、俊介はいつも顔がぶっきらぼうだ。


 なのにメディアに出た途端、かなり印象が変わるから驚かされる。



 だけど、私は本当は知っている。


 俊介はアイドルデビューを夢見ていて、誰よりもダンスやボイスレッスンに励んでいるってことを。




 「で、このかわいい僕呼びの癒されワンコ系の男の子が、大葉ヨウくん!」


 「ワンコ系って何〜?僕一応男の子なんだけど!」


 「ヨウくんは綾人達の一個下で、三つ葉学園の一年生だから、これから仲良くしてあげなね」


 確かに、かなり可愛い子だ。


 こんな後輩から「小宮山先輩」って呼んでもらえたら幸せだろうなぁ。




 「最後に、昨日付けでウチの事務所に所属することになった神崎綾人!六歳から今までずっとアメリカにいた帰国子女!」


 「りんの幼なじみの綾人です。よろしくお願いします」


 「りんの幼なじみだぁ?」


 「ちょっと俊介!威嚇しないで!」



 二人は馬が合わないのか、目を合わせればバチバチと喧嘩モードになってしまうから困った。


 ここへ来る途中、タクシーの中でも一触即発な雰囲気になって大変だったんだから。



 「ちょっと、アンタ達仲良くしなさいよね!」


 「そうだよ!僕達、同じ事務所なんだから!」


 「(ヨウくん、ナイス!そのとおりだ!)」


 「もう同じ事務所ってだけじゃないわよ」


 「え?」


 「──……あなた達三人は、来年、アイドルグループ『ルーン』としてデビューすることが決まったんだからね!」




 ……え?

 お姉ちゃん、今、なんて?



 「は?」


 「え、デビュー?」


 「わーい!僕達デビューだって!」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る