第4話:綾人VS俊介!
「キャー!ヤバイ、イケメンすぎない!?」
「神崎綾人くんって、帰国子女らしいよ!」
「しかもあのゴールドスター所属なんだって!」
綾人くんが転校生として紹介されると、途端に学園中がザワザワと騒がしくなった。
私と同じ二年A組になったはいいけれど、瞬く間にクラスの、いや、学年の垣根を越えて綾人くんの噂が飛び交っている。
私が通っている学校『私立三ツ橋芸能学園 中等部』は、名前のとおりモデルや俳優、歌手やお笑い芸人などを目指している生徒が多く入学していることで有名な芸能学校だ。
ここにいるほとんどの人達が、何か秀でた才能を秘めていて、夢に向かって頑張っている。
けれど、私はただ『芸能事務所の娘』としてここにいるだけ。
小学生のときから、執拗に『芸能人に会わせてよ!』とクラスメイトや友人、学校の先生や保護者の人達にまで言われ続けた結果、それを懸念した両親がこの学園を進めてくれて入学することになった。
「日本の学校ってすごいね……」
「すごいのは綾人くんだよ?」
学園中の騒がしさに、さすがの綾人くんも呆気に取られている様子。
他人からここまで騒がれるほど、彼の美貌はズバ抜けている。
それを証明するかのように、休み時間になるとあっという間に綾人くんの周りにはたくさんの人で埋め尽くされてしまった。
「お、恐るべし人気具合!」
お姉ちゃんから『日本の文化や学校には慣れてないだろうから、しっかり面倒を見てあげてね』と言われていたけれど、この調子なら私以外の人達がなんとかしてくれるだろう。
たくさんの生徒達から声をかけられている綾人くんを、心配しながら見守っていたとき。
「──おい、りん」
「……ゲッ」
ぶっきらぼうに私の名前を呼んだ男子。
「な、なによ。俊介」
「お前、あの神崎ってヤツと今日一緒に登校してきたんだってな?」
「そうだけど?それがどうしたの?」
俊介は十歳のころからゴールドスターに所属している芸能人だ。
もともと子役として芸能デビューして以来、今は練習生としてアイドルを目指している。
世間では俊介の俺サマ感と、ガッシリとした体格、それとこのくっきりとした顔立ちが全国の女の子を夢中にさせているのだと言われているほどだ。
それに加えて、彼はかなりの実力の持ち主で、近々アイドルデビューするのではないかと囁かれている。
「──アイツとどういう関係なんだよ」
何より、お姉ちゃんがマネージャーとして最初に担当したのが俊介だ。だから私との接点も昔から多く、いつも馴れ馴れしく声をかけてくるのだ。
「し、知らない……かな」
「へぇ、俺に隠しごとか。生意気だな」
そして俊介は、私のことを自分のマネージャーかお世話係だと思っている。
何度も『私と事務所は関係ないんだから!』と伝えても、まったく聞く耳を持たず、いつも何かと私に雑用を押し付けてくるから厄介だ。
俊介はグッと私との距離を近づけて、綾人くんのことを聞き出そうとする。
「俊介、ストップ!本当にまだ詳しくは知らないの!」
「じゃあ今りんが知ってるすべてのことを俺に話せよ」
「この……っ、傲慢男!そういうのはお姉ちゃんに聞いてよ!」
「今日ミーティングがあるっつーのは聞いてるけど、放課後まで待てねぇ。今言え」
「あのねぇ!」
俊介は綾人くんとは真逆のタイプ。
いつも俺サマで、強引で、私のことを振り回してくる。
綾人くんが天使だとしたら、俊介は確実に悪魔だ。
綾人くんが白なら、彼は黒。真っ黒だ!
「──りん、大丈夫?」
またいつものように俊介と口喧嘩に発展しそうになっていたとき。
間に割って入ってくれたのは綾人くんだった。
綾人くんは私のことを心配しながら、目の前にいる俊介のことを警戒しながら見ている。
「ちょうどいいわ。お前のこと、りんからいろいろ聞こうと思ってたとこなんだわ」
「俺のことが知りたいなら、りんから聞くんじゃなくて直接聞きにおいでよ」
なんだか一気に不穏な空気が漂いはじめた。
綾人くんは私を自分の背中へ隠して、俊介と向かい合う。
もともと人気が高い俊介と、今日で一気に知名度をあげた綾人くんが一緒にいれば、いやでも目立ってしまう。
休み時間ということもあってか、たくさんの生徒達から注目されている。
「つーかお前、俺と同じ事務所なんだって?」
「そうなの?ごめん、まだキミのこと知らなくて」
「ハッ!今日の放課後、事務所のミーティングがあるから、それが終わったらゆっくり話そうぜ」
「奇遇だね。俺も今日、事務所からミーティングに呼ばれてるから」
「え?そういえば私も、今日お姉ちゃんから放課後事務所に来てって言われてたんだ」
朝、一番忙しい時間にかかってきたお姉ちゃんからの電話の内容を思い出した。
《あ、それからさ!今日の放課後、りんも一緒に事務所に来てくれない?ちょっと伝えたいことがあるから!》
「は?」
「りんも?」
「俊介と綾人くんも?」
一体、何が起こるんだろう。
三人とも顔を合わせたちょうどそのとき、タイミングよく授業が始まるチャイムが鳴り響いた。
「りん、教室に入ろうか」
「う、うん」
クラスが違う俊介は、自分の教室に戻る間際「お前ら二人、放課後教室にいろよ。迎えに行く」と言って去っていった。
綾人くんと俊介が事務所に呼ばれることは理解できるけれど、どうして私まで?お姉ちゃんは何を企んでいるんだろう。
そんなことをグルグルと頭の中で考えながら、自分の席についた。
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