第3話:まさかの同居生活!?






 《ってことで!当分の間、綾人のことよろしくね!》


 「ちょっと、お姉ちゃん!?私、聞いてないんだけど!」


 《いいじゃない、八年ぶりの再会でしょう?それに、綾人もりんがいてくれたほうがいいって言ってたし!》


 「全然よくないってば!困るよ!」


 《あ、それからさ!今日の放課後、りんも一緒に事務所に来てくれない?ちょっと伝えたいことがあるから!》


 「私が?なんで……って、もしもし?お姉ちゃん!?」




 いよいよ夏休みが終わって、二学期がはじまる朝。


 そうじゃなくても学校へ行く準備で忙しいというのに、お姉ちゃんからかかってきた電話のせいで余計に時間に追われていく。



 「(しかも一方的にかけてきて、言いたいことだけ言って切るなんて最低!)」




 昨日、綾人くんと八年ぶりの再会を果たした。


 彼は私に会いたいから帰国したと言っていたけれど、正直、これからどう接していいのかすごく戸惑っている。



 なぜなら彼が、あり得ないくらい格好よくなって帰ってきたからだ。


 弟のように思っていた綾人くんは、もうどこにもいなかった。


 今や彼は、お父さんがわざわざロサンゼルスに行ってまでスカウトしてくるほどのイケメン具合に成長している。


 会話することは愚か、目を合わせることでさえいっぱいいっぱいになってしまう。



 「……ねぇ、りん?制服のネクタイの締めかた、これであってる?」


 「きゃっ!」



 そんな綾人くんが、まさかウチに住むなんて思ってもいなかった。


 けれど、考えてみればたった一人でロサンゼルスからこちらに帰ってきたのだから、住む場所がなくて当然だ。



 昨日、綾人くんがウチの三階にある客室に泊まったときは、お姉ちゃんが帰ってきてくれたからまだなんとかなったものの、今日から出張だと言っていたことを思い出して、青ざめた。


 ということは、今日から必然的に綾人くんと二人きりの生活がはじまってしまうわけで……。


 「(ど、どうしよう!!)」


 「りん、何かあったの?大丈夫?」


 「な、なんでもないよ!」


 「顔、すっごい赤くなってるけど」


 「だ、大丈夫だから!」



 ネクタイに四苦八苦しているあの姿でさえ、私の胸をドキドキさせるには十分すぎた。


 私は逃げるように自分の部屋へ飛び込む。



 「(ヤ、ヤバイよ!これから一緒に生活なんてできるの!?)」


 「りんー、そろそろ家出ないとまずいんじゃない?」


 「う、うん!今行く!」



 何度も深呼吸を繰り返して、どうにか平静を装う。


 けれど、どうしても胸の高鳴りを抑えることはできなかった。






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