第42話 戦闘開始、戦闘終了
……これは好都合では?
勝てないってわかったならすんなり帰してくれるかもしれん。
「そうだ、つまりあんたらの負けは確実なんだ。大人しく見逃した方が身のためだと思わないか? 賢い選択ってのをしようぜ」
「ふふ、本気でそう思っているのかい? では甘い! こちらとて奥の手というものがある。……これを見たまえ!!」
そう言って頭目が懐から取り出したのは……折り畳みステッキ? そんなもんで何しようってんだよ?
「それを取り出すって事は! 本気なんすね?」
「そうだ! 彼女達をお相手するのであれば、これくらいしなければ失礼にあたるだろう!」
「まぁ。一体何をしてくれるのかしら? ちょっとドキドキするわねエルちゃん」
「それはどうよ? 俺は禄な事にならんと思うぜ」
あちらさん随分と自身がおありのようだ。グウィニスの腕を信用しないわけじゃないが、警戒はしておいて損は無いじゃん。……何とか隙見て奪い取る、のはちと難しそうだな。
身構えていると、急激な光を放ち始めるステッキ。流石に只の灯りってなわきゃねぇよな。
「さあご覧あれ! これが我らが切り札、その目! ひん剥いてかっぽじって見開いて見逃す事なかれッ! トゥァアアアッ!!!」
奇声を上げたかと思うと光るステッキを天に掲げ、現れるのは……魔法陣? まさかコイツ!?
「召喚士だったのか!?」
「う~んこれはマズイかしらね」
眉をひそめるグウィニスの横で、つい驚いてしまったのがこの俺エレトレッダ。
まさか、こんな場末の廃工場を根城にしてるようなヤツが召喚魔法を使えるとは思わなんだぜ。
結構適正シビアじゃなかったか? いるところにはいるもんだな。なんて感心してられんなこれ!
どう見ても発動を開始している、今から強引に止めようとしたって間に合わんぞ。あれは呼び出した本人が術の途中で気絶しようが出てくるまで終わらない。
「ハハハハハ! ハーッハッハッハッハッハ!!」
「おお! 頭目がいつもより、鬱陶しい笑い声を上げてるっす!」
部下からも鬱陶しいと思われていた頭目の頭上から、ピキピキと音を立てて何かが降臨してくる。体の一部だけでもデカいじゃないの!
そうして満を持して現れたのは……無機物の印象が色濃ゆく、機械とも生物とも受け取れる異形の怪物だ。少なくとも六メートルはある。
「フゥ~ッ! どうだい、この力強さは!! これが我が秘蔵の一品! 勇猛たる気高き御名をメカドラガッ! そうまさにこれが我々の切り札だ!!!」
「わ~、カッコイイわねぇ。ねえ、こういうの男の子よね。やっぱりエルちゃんも好きなのかしら?」
「嫌いじゃないけどもさ、そういう状況じゃねぇだろ!?」
なんか強そうなもんが出てきた。名前通りにメカメカしいな、都会っぽいイマドキなデザインだぜ。これは流石にマズイか?!
それでも、と思ってチラっとグウィニスの顔を見る。その顔は、ちょっと困ったような顔をしているだけで別段焦っているようには見えなかった。
……これはつまり。
「これはちょ~っと骨かしら。……仕方ないわね、え~い!!」
構えから一瞬、間抜けな掛け声を出しながら真上に大剣を掲げて一気に振り下ろす。
次の瞬間、――離れた先にいたそのデカブツは一歩も動く事無く真っ二つに両断されていた。
「ふえ?」
「えあ?」
何が起きたのかわからずに素っ頓狂な声を出す強盗二人。
「うん! 実戦で使ったのは初めてだけど、うまくいったわ!」
この女、ついに鉄の塊まで寸断出来るようになったんか? 怖いぃ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます