第21話 情報を集める

 荷物をラゼクに渡し、俺達は郵便局を出て山の奥地へと……。向かう前にやっぱ聞き込みでもしようかな!

 初めて行く場所だからね、いくらでも情報は必要でしょう。


 ……いや別に下心があるわけではないんだ。うん。


「と、いうわけで俺は聞き込みに……」


「ホントに只聞き込みに行くだけよね? 胸の大きな綺麗なお姉さんをナンパするわけじゃないのよね?」


「……………………」


「いや、何とか言いなさいよ!? 目を逸らすな!」


「ま、待て! 俺がそんな節操の無い男に見えるって……」


「見えるから言ってるんでしょうが。ったく、アタシもついて行くからね。いい?」


「え? でも、こう言うのは二手に分けれるのがセオリーってもんじゃ」


「は?」


「あ、いえ何でもないです。はい」


 結局、二人で行動することになった。


 ………………

 …………

 ……


「あ、そこのお姉さん! どうです? 僕とこれから森の喧騒に包まれながら、互いの将来について語り合うというのは? いえきっと、素敵な時間になるとお約束いたしましょう!」


「だからやめなさいって言ってんでしょ!!」


 ラゼクが俺の耳を引っ張って強引に引き戻す。痛ってえなぁ……。



 一通り聞き終えて、情報を整理するとこうだ。


 山奥にあるウォーランヴィレッジについて。


 人がまともに通れるような道は乏しく、険しい山道を登って行くしかない。しかし、道は険しくとも行けないことはない。


 現に町の人間で行った事のある人間も多くは無いが、装備をしっかりと整え、自身の体力と地理を把握すれば辿り着けなくはないとのこと。


 山道には人間に敵対的な魔物の類も少なくないが、鍛えた人間なら造作も無い程度だという。


 真面目に歩いてもたどり着くのに数時間を要する為、大概の人間は午前中に出発するんだと。

 

 それと……。


「そういや女の子と背の高い男が山に登ってくの見たな。態々登ろうってんだから登山家か冒険者なんだろうけども。男の方はともかく、あんな背の小さい女の子が山に向かうなんて物好きなもんだなって」


 なんて事を麦わら帽子をかぶって首にタオル巻いたおっさんが言っていた。


 どういうこった? 冒険者が向かったなら、その話を俺が知らないってのはおかしい。それとも依頼とは関係ないって事か? もしくは本当に単なる物好きか。


 小さい女の子ねぇ……。その時点で俺の好みじゃないが、もし同業者だったら声でも掛けるか。何か困ってたら恩も売れるしな。


「さて、じゃあそろそろ出発しましょ? もたもたしてたらお昼が来ちゃうわ」


「つっても朝っぱらから列車とバス乗り継いで来たんだぜ? 正直今腰が……」


「おじさんみたいな事言わないでよ、アタシと年近いんだから。もう~、ちょっと待ってなさい」


 そう言うやいなや、ラゼクはリュックを下すと中身をゴソゴソと漁り始めた。

 そうして取り出したるは………。丸いケース?


「はいこれ」


「え? 何これ?」


「アタシ特性の軟膏。腰痛にも効くわよ」


「へえ。調合が得意つってたけど、こりゃ助かるぜ」


「じゃあ向こうの茂みで塗って来なさい。待ってて上げるから」


「へいへい……。しかし茂みでって、まるでションベンに行くみたいだな」


「……アンタはもう少しデリカシーを身に付けなさいよ。ほら早く」


「はいよー」


 ………………


「ふぃー、スッキリしたー」


「だから言い方ってもんがあるでしょうが」


「あ、ごめん」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る