第二章
第18話 ヒロインとの同棲生活
初めての依頼達成から数日後。
何時までもビジネスホテルで暮らすわけにもいかないのでギルド所有のビギナー冒険者向けの部屋を契約。
少し古いし、二人で暮らす分には狭く感じるが、ギルド契約で格安で借りられるので文句を言うわけにはそりゃあいかないわけで。
そんなこんな、今日も俺は優雅に起き上がるのであった。
「ぐへへ~、そんなにもみくちゃにされちゃあ俺も困っちゃうぜウサギちゃん」
「いつまでバカみたいな夢見てんのよ! とっとと起きなさい!」
「痛ったぁ!? い、いきなり殴る事ないじゃんか……」
「アンタが寝ぼけて気持ッち悪い声出してたからでしょうが!」
朝から騒がしいラゼクに起こされて目を覚ます。
「……なんだよ。まだ時間あるじゃないか。もう少しぐらいゆっくりさせてくれないかな」
「朝の七時はもう早朝とは言わないのよ。さっさと着替えて顔洗って、ご飯だってもうできてるのよ」
「へいへい……。わかったよ。まったく、そういう所が彼氏できない理由だぞ」
「余計なお世話よ! ほら早くしなさいエル。じゃないとご飯抜きよ!」
「はいはい。わかりましたよお嬢様」
渋々と布団から起きると欠伸を二、三回。ロフトを降りて洗面所へと向かう。
水にさらした顔を鏡で確かめる。
うん、今日もどこに出しても恥ずかしくない色男。さあ朝飯だ!
戻ってきたらテーブルに並べられてるご飯。
白飯に味噌汁に焼き魚とたくわん。古き良きザ・朝飯といった感じ。
椅子に座って手を合わせる。
「いっただきまーす」
「はい、いただきます」
まずは箸を手に取り、魚の身を解すと米の上に乗せて口に運ぶ。
朝って感じが増しましになるなあ。
そして次に味噌汁を口に含む。
あー、これだよなあ。なんかこう、ほっとする味というか。
「うん、今日も美味しい。さすがにアタシよね」
「これも花嫁修業の成果ってか? 胸のねぇ女の健気な努力だな」
俺はそう言って魚に箸をつけようとして、空を切る。あれ?
ラゼクに取り上げられた俺のお魚ちゃん。
「何すんの?!」
「つまんない文句を言う男に食べさせてあげるご飯は無いわよ。これはもうアタシのものってわけ」
「い、いや言葉のあやって言うかさ。……いや~今日もなかなかに麗しいですなラゼクさん、そう遠くないうちに、いやきっとすぐ明日あたりにもしかしたら素敵な貧乳好きの彼氏ができるんじゃな」
「は?」
「いや今のも言葉のあやで……。ごめんなさい食べさせてよぉ!」
「最初から素直に謝りなさい! はぁ……全くアンタという男は……、本当に仕方がないんだから……はいどうぞ。感謝しなさいよ?」
「ありがとうございます。この御恩は決して忘れませんとも」
「アンタが言うと安く聞こえて仕方ないのよ。あんまりバカなこと言ってるともう作ってあげないんだから」
「それは勘弁してくだせぇ」
「だったら黙って食べることね」
「はいよ……」(ふぅ、危なかったぜ)
俺はラゼクから貰った朝食を平らげると、ラゼクの分の食器も合わせて流し台で洗い、それから身支度を済ませる。
リビングで着替える俺と隣の部屋で着替えるラゼク。
『覗き見しないでよ?』
なんて最初の頃は言われたが……。
『ンな貧相なもん、なんもそそられねぇよ。自意識過剰なんじゃない?』
そんなこと言ったら顔面に拳が飛んできた。痛かった。
部屋着から着替えた俺たちは、さあ、いざ行かんとばかりに意気揚々と部屋を飛び出すのだ。目指すは依頼斡旋の場、ギルド!
「アンタ、武器とバッグ忘れてるわよ!」
「あっ」
「もう、しっかりしなさいよ。あと、ちゃんと鍵持ったでしょうね? 財布も忘れてないか確認しなさい。それに……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。