第13話 華麗な初戦闘
坑道の奥へと進んでいけば、予定通りのヴェノムスパイダーを発見。薄暗いながらも電灯はまだ生きているので完全に暗いわけではない。
丈夫な導線を生命線とする白熱電球が、奴の姿を映し出してくれる。不本意ながら額を赤く擦ってしまった俺はコイツの相手をする事にした。
「さあ行くぜクソ蜘蛛! テメーに目にものお見舞いしてやらぁ!」
「お手並み拝見といこうじゃないの」
「が、頑張って下さ~い!」
俺のすぐ後ろで二人が見物する。おまけに黄色い声援一名付きときたもんだ。
まあ見てろ、過去に何度も狩ってきた相手だ、赤子の手をひねるように蹴散らしてやろう。
にらみ合いをする俺たち。
先に動いたのは――俺だった。
「あ! 可愛いメス蜘蛛!」
俺の声に反応して、目の前のクソ蜘蛛は後ろを振り向く。
バカめ!
その隙を突いて、持っていたマッチを数本火を付けて次々と投げつけた。この坑道から天然ガスの類が確認されて無いのはとっくにご存知だぜ!
完全に油断したあの蜘蛛は、突如自分の体に火が付いた事に驚き慌てふためく。こうなればもうこちらのものだ。
足元に落ちていた拳大の岩を持ち上げると、やつの顔面めがけて一球入魂!
「喰らえ必殺! 隕石アタック!!」
見事命中。さあ、とどめを刺してやるか。
所詮コイツはモンスターといっても蜘蛛……虫なのだ。
痛みにひるんだそいつに向かって、懐から取り出した殺虫スプレーを思いっきりふりかける。
哀れ。暴れる気力すら完璧に失った蜘蛛は、そのまま帰らぬ虫となる。
「ふ、我ながらスマートだぜ」
「その腰にぶら下げた剣は飾りか何か? アンタの戦い方って、なんか姑息よね。そうは思わない?」
「え~と。た、戦い方は人それぞれですから。……いや、普通に卑劣なんだけどさ」
「うるせえな、勝てばいいんだよ!」
「はいはいそーですねー」
くっ、ラゼクのヤツ。生意気な口を利きやがって、これが先輩の戦い方ってもんなんだよ。
「とりあえずこれで一匹だ。ほら写真に撮って。きっちり仕留めたってところを見せねぇと金払ってくれねぇんだぞ、ギルドってところは」
「分かってるわよ。はいチーズ」
バッグからギルドから借りたカメラを取り出したラゼクは、ヴェノムスパイダーめがけてシャッターを切った。
まばゆいフラッシュと共にカチっと音が鳴れば、しばらくして写真が現像されてカメラから出てくる。
普通のカメラだと現像に時間が掛かり、その間は当然報酬が振り込まれないのでインスタントを使用する。カメラにしては大きくてかさばる上に、フィルムが少ないのが珠に傷。
うん、バッチリ! しっかしカメラってのはどうして白黒でしか撮れないものなのかね? ちょっと前まではセピアだったけど、技術が発展すればもっと色がつくようになるのかな? ま、俺は技術屋じゃないからわかんないけど。
「うん、綺麗に撮れたわね。アタシったら結構な腕前でしょ? これでも里じゃ観光客にカメラを頼まれてたからね」
「へぇそうなんですか。でも、確かにお上手ですね」
「お前の里って観光客が来るようなところなのかよ。……まあいいや、フィルム代はギルド持ちっていったって無駄に撮ってると無言の圧力をかけてくるからな、気を付けろよ」
「はいはい」
俺たちは写真を撮り終えると、死体を埋めて奥へと進んでいく。
毒蜘蛛を埋めて大丈夫か? なんて思われるかもしれないが、アイツの持っている毒は動物に対して有効なのであって、土壌に対してはむしろ栄養を与えてくれる。らしい。
だって詳しくは知らないんだもの。寝ぼけ半分に聞いたギルドの講義でそんなことを言っていたような気がするだけだもの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。