第6話 パーティ結成

「さてと、腹ごしらえも済んだことだし、これでおさらばだな。……親切心でひとつだけ忠告しておくがな、この街は都会寄りつったってああいう手合も珍しくない。貧乳好きの物好きな彼氏でも作って一緒に行動することをオススメするぜ。じゃあな、あば」


「ちょ、ちょっと待ちなさい!!」


「あん?」


 席を立ち上がりかけた俺に待ったがかかった。

 一体何の用だって?


「アンタさ、気にならない?」


「何が?」


「アタシがさっきハゲゴリラに言い寄られた理由よ」


「全ッ然。しいて言うなら、やっぱ世の中には好き者っているんだなって」


「おおきなお世話よ! そうじゃなくて……ああもう! ハッキリ言うけど、今パーティのメンバーを募集してるの。それでさ、アンタ今フリー?」


 どうしよう。めんどくさい気配が一気に漂ってきた。この話は早々に切り上げるべきだ。

 思い立ったが吉日、俺は素早く断りを入れた。


「フリーかと言われれば今ちょうど偶然にも奇跡的に隣は開いているが……。悪いな、俺の隣は飛び切りのバストを持った包容力に溢れた大人の女性専用なんだ。だが、この俺に目をつけたのはいいセンスしてると思う。そのセンスを大事にして仲間探しに励んでくれ。じゃあ」


「つまりアンタ一人ぼっちなわけね? じゃあ丁度いいでしょ。馬鹿みたいにアタシのお金でたらふく食べたんだから、少し位融通効かせても罰は当たらないんじゃない?」


「ぼっちで悪かったな。それにそんな事言ったってねぇ、大体俺はお前の名前も知らないワケだし……、いややっぱ知りたくない。僕たちの関係はここできっぱりと終わらせるべきなんだ、今この瞬間から赤の他人になるべきなんだ」


「つまりアタシのことを知ったらいいわけね? アタシの名前は」


「あああああああ!!!」


 俺は急いで耳を塞ぎ、大声を出して聞こえないようにした。

 なのにこの女ときたら、俺の腕を無理やり耳から剥がそうとしてくる。


 なんだコイツ、意外と馬鹿力じゃねぇか!


「子供みたいなことしてんじゃないわよ! いい? アタシの名前は……!」



 全くなんて日だ! 結局このアマの思い通りになってしまった。


 知りたくもなかったコイツの名前は、ラゼク・サトーエンと言うらしい。

 獣人族はジャレストフォルの血族で、特徴的な猫耳と尻尾を持つ。


 つい先日、里からこの街にやってきたばかりだという。そして、今は冒険者として生計を立てようとしている最中とのことだ。


 なんでもコイツの里じゃ十八歳を迎えると成人の儀として、外に出て自分の実力に見合った仕事をこなすことが義務付けられているらしく、そこで認められるまでは里に戻る事が出来無いらしい。


 はぁ、今どきこんな因習が残ってるとはね。これだから田舎ってやつは。


「アンタさ、今なんか失礼なこと考えてない?」


「……そ、それはお前の自意識過剰だよ。牛乳飲みな? カルシウムが足りてないからつまんない被害妄想に囚われるんだ。ついでに一抹の望みをかけて胸を大きくしてみるんだな」


「なんですって!!?」


 まったく口の減らない女だな。人が折角親切心で言って上げてるってのに。

 これが世間知らずってやつか。仕方ない、都会のように雄大な心で受け止めて上げようじゃないか。


「感謝しろよ。俺がお前の胸板並に情の厚い男な事をよ」


「いちいち憎まれ口叩かなきゃ気が済まないワケ?!」

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