第7話 装備を整えて

 ファミレスを出た俺たちが今向かっているのは、装備品を整える為のショップだ。

 中に入ってみると、これが品物の質、量共に申し分が無い。


「ほえ~。中々立派な店構えだなぁ」


「当たり前でしょ。この街で一番の品揃えだって評判なんだから」


「なんで街に来たばっかのお前が偉そうなんだよ? そういう情報ってのはどうやって仕入れてんだ?」


「この手の情報は事前に仕入れておくもんでしょ」


「そうか……。そうかもな」


「なんっか頼りないわね、アンタも一端の冒険者じゃないの?」


 んな事言われてもその手の仕事は俺の担当じゃなかった。

 思えば、あの連中と縁が切れた以上俺もこういう事を覚えていかんとなぁ。


 ま、今は装備を固めるとしましょしましょ。

 今必要なのは、何においても武器だ。手に馴染んだ物は置いてきてしまったから代わりがいる。


 でも俺が使う武器はとうに決まっているのさ。


「やっぱこれだね」


 俺が手にとったのは二本の剣。護拳の無いサーベルに頑丈な両刃のナイフ。

 この長刀と短剣の二刀流が俺のスタイル。どっちも鍔を持たないデザインだが、それが妙に俺の感性に合う。


 何よりいいのは、割りとどこでも売っているってところだな。

 気兼ね無く使い潰せる。これが何より大事。


「ふぅん、アンタそういうチョイスなワケね」


「スタイルなんざ千差万別だろ。そういうお前は買うもん無ぇのかよ?」


「あるわよ。アンタと違ってちゃんと考えてるんだから」


「ふぅん」


 聞いといてなんだけど正直興味がなかった。俺自身言った通りスタイルなんて千差万別だ、他人が何使おうが勝手にすりゃいい話。


 その後は必要な道具もいくつか見繕って、店を後にした。


 会計の際それとなく奢ってもらおうとしたが、さすがに無理だった。飯代セーブして、その分をこっちに当てて貰うべきだったか?


 今考えても後の祭りだな。


「よし、一通り揃うもん揃えたしやることと言ったら一つよね!」


「ああ、今日の宿を一体どうするべきか……」


「違うでしょ! もっと大事なことがあるでしょうが!?」


「そんなこと言ったってお前、いくらなんでも野宿は嫌だぜ。それもこんな街中で。朝飯はホームレスのおっさん達と一緒に炊き出しに並べってのかよ!」


「誰もそんな話はしてないでしょうが! アンタ冒険者としての自覚あんの?!」


「馬鹿野郎お前、こちとらこの筋一年と二ヶ月だぜ? ベテラン様に対する口の利き方ってのがなってないんじゃねえのか?」


「たった一年ちょいじゃない。あんたこそそれでよく偉そうにできるわね?」


「んだよ。結局何をお望みなワケ?」


 ラゼクは呆れたように溜息を吐いた後、「まずはパーティーの登録でしょうが」と吐き捨てるように言ってのけた。


 なるほどこいつは盲点だったぜ。

 確かにこれから冒険者としてやっていくのなら、届け出を出さないと。不法冒険者でお縄行きだ。


「へっ、お前にしちゃあ随分とまともなこと言うじゃねぇか。ま、これも全てそう考えつくように仕向けた俺の誘導が優れていたってことなんだけどな。感謝しろよ」


「嘘ばっか言ってんじゃない! こんなところでいつまでもこんなバカなことやってる意味なんてなにも無いんだから、とっとと行くわよ!」


 ぐえっ。

 急に腕を強引に掴まれた俺は、そのままずるずる引きずられていく。


「ばっ、急に何すんだ!?」


「ほら大人しくついてくる!」


 なんて強引で可愛い気の無い女だ。きっと今まで彼氏の一人も出来なかったんだろうな。紳士に対する配慮ってもんがない。

 まったく、これだから礼儀知らずの田舎の小娘は。


「……アンタまたなんか失礼な事考えて無い?」


 おまけに感も鋭いときた。

 こりゃ彼氏が出来ても直ぐに逃げられるタイプだろうな。


「……ったく、分かったよ。黙ってついて行きゃあいいんでしょうが」


「最初から素直にそうしてればいいの。ホント、世話の焼ける男ね」





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