第3話 ヒロインと遭遇
さてと、これからどうすっかね?
勢いよく飛び出してきたはいいものの、じゃあこの先何か考えがあるというわけではない。目的はある。でもその目的のためにどうすればいいのか全く見当がついていないのだ。
アイツの顔と人望を利用すれば寄ってきた女とうまいこといい感じになれるんじゃないか、なーんて思ってたんだけれど。
まぁ結局こうなってしまったわけで。
一度クビを切られた以上、改めて他のパーティに入れてもらうというのは難しい。なぜならクビにされたということは何かしら問題があるとしか思われないからである。
それは至極当然なこと。当然なことだけれども、じゃあそれを素直に受け入れていいかと言われたらそれはそれで悔しいわけで……。
ああ、まったくなんて世知辛いんだ!
身一つでやり直そうと決めた以上は、やっぱり自分で立ち上げるしかないんだろうか……。
めんどくせー。やっぱり今からでも……。
いやいやいや。一度決めた以上は何もせずになりだすというのはやっぱりまずいか?
仕方がないしばらくはソロで頑張ってみようじゃないか。ソロデビューで頑張ってみようじゃないか。かっこいい響きだしなソロデビュー。
あっちはあっちでどうせ俺を追い出した事で評価上がってんだろうな。
チクショー、俺が何したってんだ? ただちょっと巨乳のお姉ちゃん達とお近づきになりたかっただけなのに。あんまりだぜこれは、ストーカー扱いかよ。
「…………はぁ」
ため息が出る。
「……はぁ~」
もう一度出る。
「……はぁぁぁ」
三度目はちょっと長めに。
「……はぁぁぁぁ」
はぁ、もうダメだ。
「はぁ……「もう! うっとうしいわね!!」……あん?」
街中をため息をつきながら歩いていると、突然横合いから声をかけられたのでそちらを見てみると、そこには俺より少しばかり小さい背丈の女が立っていた。
歳も俺と同じか少し下ぐらいに見えるが、髪の色は青っぽい黒。
それに何より目を引くのが頭の上に乗っかっている猫耳。
よく見たら尻尾もある。
獣人種か……。いや肝心なのは何よりも……。
じ~……。
「な、何よ? 一体どこ見て……」
女は自分の胸部に目を向けられていることに気づき、咄嗟に胸を押さえた。
「ちょっと!? 初対面でそういう事するわけ! おかしいんじゃないのアンタ?!!」
「ヘ、別に胸無しのお嬢ちゃんには興味は無ぇんだよ。俺が良い男だからって相手して貰えると思ったら大間違いだぜ」
俺は余裕たっぷりの態度で言う。
「は?」
しかし彼女は俺の言葉の意味が分からなかったようで、キョトンとした表情を浮かべていた。
……あれ? 俺なんか間違ったこと言ったかな?
そんな事を考えていると、彼女の顔がみるみるうちに真っ赤に染まっていく。
そして――。
―――パァンッッ!!!
俺の頬に強烈なビンタが炸裂した。
俺は吹っ飛びながら思った。
――痛ェ!?。
空中でそのまま回転したあと地面と激突する俺。
いやいや、ここまでやられる覚えは無いだろう!!?
「何しやがるこのアマ?!」
俺は立ち上がりざまに怒鳴りつけた。
「何するはこっちのセリフよ!!! いきなり失礼にも程があるわっ! しかも人のことを胸が無いだのなんだの! ふざけんじゃ無いわよっ!!!」
彼女がそう言った瞬間、俺は気づいた。
そういえば、俺は彼女に胸が小さいと言ってしまった。
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