第2話 どうしても言いたかった男の主張
などと言うやりとりを昨日してしまい、今やフリーになった俺。
フリーという事は自由の身という事。ならば外聞を掻き捨ててここで溜まったうっ憤ばらしをさせて貰うぜ!!
場所は街の中央広場。
時刻は朝十時。
本日、そこでは日頃の思いの丈を主張する催しがされており、俺は世間体のフィルターを通す事無く思いっきり叫んだ。
『デっカい事こそが良い事に決まってんだろうがテメェらァッ!!!』
~自称、不当解雇されてしまった追放者:E氏による魂の主張~
「いいか聞け! よく聞けテメェらッ!!
昨今、巷じゃあやれ貧乳だやれ無乳だと崇め奉るような連中も珍しくなくなったこの情勢がっ、いかに危険かわかってんのか?! 旧来の原初たる巨乳派閥がその発言権を抑え込まれようとしているんだぞ!!?
しかも、しかもだっ。声高々に叫ぼうものなら批判を食らい、その息の根を止めんとするまで罵倒を続ける層が幅を利かせて大らかさが失われ始めているこの現代ッ!!
俺はこのままではいかんとっ、いかんと立ち上がらねばならんのだからならんのだッ!!! もうそうなってしまっているんだよ!!
テメェらも志を同じくする徒であるならば、黙って俺の後ろを走れッ! 死なば諸共にィ! 玉砕してもその果ての栄光の礎となれ! それがァッ――」
――男ってもんだろォがァーーッ!!!
拳を突き上げて、渾身の魂の叫び。
演説を締め括ると同時に、会場からは野郎共の割れんばかりの歓声が巻き起こった。
女の目線なんか知った事かッ! 俺は魂から叫びたかったんだ!!
壇上でマイク片手に熱弁を振るった俺は、女共のトゲを刺すような視線に見送られながら広場を後にした。
もちろん、パーティーに戻るつもりは毛頭ない。
俺は胸の大きい女が好きなんだ。それなのに勝手に勘違いしてくれた団員共に、俺の好感度はダダ下がり。所詮奴らは”持たざる者”。
さて、これから先のことを考えねばならないが、まずは俺の今後についてだ。
俺は浪漫を愛している。
当然だろう? 俺は一人の男だ。男という性に生まれ、浪漫を捨てて生きられるのか。否。断じて否なのだ。
そう、男という生き物は夢を追い求めなければ生きていけない哀しき生物……。
浪漫――。
一口に浪漫と言ってもいろいろあるだろう。冒険に情熱を燃やすのも、武芸を極めるのも、はたまた技術に命を懸けるものもいい。
だが、そもそも浪漫の原点とは何だ?
哲学的で答えを出すのに膨大な時間が求められる問いだろう。
だが、だがであるっ。俺はそれでも一つの答えをだした。
俺は、人間だ。生まれた時には母親の胸で育てられた。
そう胸。おっぱいだ!
赤子として生を受け、その味を堪能しなかった男なんてそうそういるもんじゃない! つまりだっ、おっぱいこそが原初の浪漫。男の浪漫の原点であり究極形と呼んで間違いなどあろうはずがないッ!!
何? 女だって生まれた時は飲んでるだろう? うるせえ!!
この世に生誕してかれこれ十数年。
……まぁ、それは置いといて。
とにかく、俺にとって最大の浪漫とは女の胸に抱かれて眠ることなのだ。
異論は認めよう。断固として認める。
そいつが貧乳派閥でなかったらなァ!!!!
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