幼馴染のイケメン勇者が女である事を追放された俺だけが知らない ~無自覚の駆け引きに翻弄されるのは果たして?~
こまの ととと
第一章
第1話 追放処分を受けた男
「エレトレッダ。唐突かも知れないがキミをこのパーティーから追放する」
そんな事をほざくのは、俺の幼馴染。ショートのオレンジ髪のティリート。
身長もあり、甘いマスクで世の淑女の見覚えがムカつく程良いエリート剣士だ。
傍から見たら、飽くまでも傍から見た評価として月とスッポンの差があるらしいコイツと俺は同じパーティーに所属する。
「テんメェ、一体どういう了見でこの俺を追い出そうってんだ。あああん!!?」
「いいかい? 一度だけ言うから良く聞くんだ。ボク達はね、自惚れるわけでは無いけど王と国民からも期待されているパーティーなんだ。当然、求められるのは単なる戦力だけじゃない。それだけじゃ許されない程に有名になってしまったんだ。分かるね?」
まるで、子供にでも言い聞かせるように、女を即落ちさせる甘い声で語りかける。
こいつはいつもそうだ。まるで俺の事を出来の悪い生徒かのようにしか扱わない。そのキザったらしい態度が昔から気に入らない。
大体このパーティーだって、元々はコイツに誘われたから仕方なーく入ってやったんだぜ?
それがどうだ? 出て行けだぁ? このヤロウ、俺を舐めくさりやがって!
俺の心情を知らないヤロウは、構わず続ける。
「つまるところ、品性だよ。キミとくれば、旅先に美しい女性……それも胸の大きい女性を見ればすぐに口説きにかかる。挙げ句の果てにはフラレてもめげずにストーキングする始末。その苦情を真っ先に受けるのは誰だと思ってるんだい? 外でもないボクじゃないか」
「そりゃリーダーとしての仕事だろ? 団員のケツを拭くのも立派なリーダーの条件だ。俺はお前にその経験を積ませてやってるんだよ。感謝しろい」
「……そうかいそうかい、それは済まなかったね。余計な手間を掛けさせてしまって! しかしだ、現実問題として苦情が入っている以上、キミをこのままにしておく訳にもいかない。他の団員にも示しがつかないからね。大体他の団員だってみんな女性だよ? 周りからの目をもう少し気にするべきじゃないのかい?」
何言ってやがる。他の団員つったって……。
「全員貧乳だろうが。お前の趣味か知らねぇが、どっちが前か後ろか分かんないような鉄板女ばっかり集めやがって。そのうっ憤を外で発散しようってんだから止めるんじゃねぇっての!」
「……今の暴言は聞かなかった事にしておいてあげる。でもね? 迷惑しているんだよみんな。これ以上は限界だ。キミとしてもちょうどいい時期だろう」
なんだと!? 大人しく聞いてりゃぁ好き勝手言いやがって!
「ここ出て行ったら俺はどうなる? このパーティーのブランドがあったから女との縁もあったのに、それが無くなったらただの不審者として通報されかねねェだろうがよォ!!」
「自覚はあったんだなぁ。……いや、普通にさ。その性格を治しなよ。それにボクだって鬼じゃないんだ。路頭に迷う事がないようにちゃんと故郷の母君にも連絡を入れておくから、帰って畑の面倒を見ておくといい。ボクも故郷に戻った後、キミの成長を楽しみにしておくからさ」
冗談じゃない。また、母ちゃんに小遣いねだりながら畑に鍬を突き立てる日々に戻れって言うのかコイツは! それに、俺の成長は俺が決めるもんであってテメェのお楽しみじゃねえんだよ!!
「ケ、お断りに決まってんだろ! 今更イモ臭い生活なんて御免だね。折角田舎を飛び出してきたんだ、色っぽい姉ちゃんとまともに遊ぶ事も無く戻れるものかよ!!」
「もう、いつまでもそういう了見だからキミを追い出さなくちゃならなくなったんだ」
知ったことかってんだ! 俺はこういう男で、生き様なんだ。変わりゃしないんだよ!
……うし、決めた!! 温厚な俺も怒ったぞ!!
「ただね、キミがどうしてもこのパーティーを出て行きたくないと言うのであれば、今直ぐ心を入れ替えてボクの指導を受けるんだ。そうしたら他のメンバーとの仲も取り次ぐよ。大体、胸の大きい女性を追いかけるのを止めてもっと身近な……た、例えばずっと昔からキミとの関係を「そこまで言うならこんなパーティー出ていってやらァ!! 後で吠え面かくんじゃねえぞッ!!」あ、ちょっと!!?」
ヤロウが何か言っていたような気がするが、それに構わず俺は出ていった。
こうなりゃ俺も男だ! 身ィ一つで成り上がってやらァ!!
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