第11話 城門前


 旅装を整え、エレーナと一緒に屋敷を出る。とはいっても二人ともアイテムボックス持ちなのでテキトーに必要そうなものを放り込んだだけだけど。


「さて、旅立ち前の最後の挨拶として――王城あたりを吹き飛ばしてしまいましょうか」


「やめぇい」


 まったくなんでこの子はこう魔王的思考なのだろうか?


「……なるほど。一瞬で終わらせるのではなく、じわじわといたぶって苦しめようと? さすがミラ、魔王的発想ね……」


 なぜ私が魔王扱いされなければならないのだろうか?


 ともかく、王城を吹き飛ばしかねなかったエレーナを止めた私、大英雄として賞賛されるべきなのでは?


「実際は犯罪者扱いで逮捕状が出ているわね」


 ままならない世の中である。


 ま、逮捕状が出ていようが、出国してしまえばこちらのものだし、なんなら王都を出てしまえばもうまともな追跡もできないでしょう。


 というわけでさっそく城門目指して(エレーナの)馬車を走らせ始めた。ちなみに商会の売却に時間が掛かったのでもう辺りは薄暗い。

 ……まぁ、エレーナはたとえ真夏日でも平気な顔で出歩けるんだけどね。吸血鬼のくせに。


「むしろ日中出歩ける吸血鬼なんてテンプレだよね」


「前の世界のテンプレを持ってこられてもねぇ」


 そんなやり取りをしている間にも馬車は進み、大通りに出ると……なにやら混雑していた。いや王都の城門に続く通りなのでいつも混んでいるのだけど、今日はなんかもうレベルが違う混雑だ。


 普通なら馬車も立ち往生してしまうのだろうけど、そこはさすがの階級社会。何かを言うまでもなく人の方から馬車を避け、ゆっくりながらも城門近くに到達することができた。


 騒ぎの原因は、閉門時間前なのに固く閉ざされた城門。そして、門番と言い争いになっている『エルフ』の少女だろうか?


 いや、門番に取り囲まれて、一方的に詰問されているってところかしらね?


 ちょっと気になったので妖精様(天然物)を門近くに派遣し、音声を届けてもらう。


『だから! 知らないわよ!』


『とぼけるな! 同じエルフなのだから知っているだろう!』


『いくらエルフだからって、ただの冒険者が大賢者様の行き先なんて知っているはずがないでしょうが!』


 うん? 大賢者?

 この国で大賢者&エルフというと……。


「……あぁ、ミラを指名手配したはいいけど、私の屋敷で引きこもっていたものね。じれた門番が手当たり次第『同族エルフ』を詰問しだしたってところかな」


 引きこもっていたんじゃなくて、そっちの準備を待っていたんでしょうが。


 じゃなくて。……え、それ、私のせいってことになるの?


「悪いのはあのバカ王様だけど、まぁミラのせいって言えばせいになるんじゃないのかな?」


 なんてこったい。

 いくら赤の他人(他エルフ)とはいえ、私のせいでトラブルに巻き込まれているとなれば見過ごせない。盛大にため息をついてから私は馬車から降りたのだった。



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