第2話 転生後の世界


 そうして。私はたぶんしたのだと思う。


 転生した先は、よくあるファンタジーな世界だった。魔法があり、ドラゴンがいて、冒険者という職業がある世界だった。


 転生した私の人種は――エルフだった。

 実家は『王国』有数の貴族だった。


 見た目は良く、地頭も良くて。家族愛は希薄だったけれど、実家はお金持ち。


 前世から比べると夢のような境遇だった。

 実家の家格とエルフの見た目を有効活用すれば、労せずお金持ちと結婚できるはずだった。


 でも、私は後悔したくなかった。

 やり直せたのはきっと神様のおかげ。転生できたのはきっと私の願いを聞き遂げてくださったから。そう確信した私は努力した。


 前世でやらなかった勉強を。

 前世で避けてきた人付き合いを。

 前世で興味を抱けなかった友達作りを。


 一生懸命努力した。

 一所懸命やって来た。


 そのおかげか私は若くして『大賢者』の地位に上り詰めることができたし、実家の後押しもあって王太子殿下の婚約者にもなれた。


 殿下は良くも悪くも普通の人だったけれど、悪人では無かったように思う。


 努力が実を結んで出世して。婚約者もできて。親友と呼べる存在も何人かできたと思う。


 最高の人生だった。


 やり直したいだなんて微塵も思わなかった。


 これからは、この幸せをお裾分けしないといけないなと考えた。将来的には王妃になるのだから、国民の幸せのために頑張ろうと心に誓った。


 順風満帆。


 順風満帆すぎる人生。


 ……そう、私は、順調すぎたのだ。


 もしもこの世界が物語だったなら。幸せの絶頂からどん底に叩き落とされるでしょう。私が作者だったらそうするし、――神様も、どうやらそういう腹づもりだったらしい。


 とある日。

 私は(将来義父となるはずだった)国王陛下に呼び出されて。



「――ミライン・ガンドベルク公爵令嬢! 本日を以て、貴様から『大賢者』の地位を剥奪するものとする!」



 どうやら。

 神様は私のことが嫌いらしい。



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