【18歳以上向け】猫耳メイドのコスプレをした血のつながらない妹と……(前編)


  *


 ※性的な表現があります。この小説の登場人物は十八歳以上です。


  *


 俺と妹に血のつながりはないのだが、それを知ったのは恋人になったあとだった――。


  *


 なぜか俺の部屋に猫耳メイドの格好をした、スレンダーな美少女が立っていた。


「えっと……どちらさま?」


「……お、お兄ちゃん」


「えっ? お、お兄ちゃん!?」


 俺は素っ頓狂な声を上げた。


 ――俺のことをそう呼ぶのは、一人しかいない!


 俺が驚きで固まっていると、少女は恥ずかしそうに言ってきた。


「ご、ご主人さま……」


 そして、頬を赤らめながら、スカートの裾を持ち上げる。


 それは、まるで、お嬢さまが挨拶するときのような仕草だった。


 だが、そんなかわいらしい動作とは裏腹に、少女の頭から生えている猫耳がピコピコと動き、お尻からは尻尾が生えていた。


 間違いない。


 この少女は俺の凛花の「凛花りんか」だ。


 でも、なんで凛花はこんなコスプレをしているんだ?


 それに、なぜ急に現れたんだ?


 俺は混乱しながらも尋ねてみた。


「ど、どうしたんだ、凛花? そんな恰好をして?」


「そ、それは……」


 と、凛花はモジモジしながら口籠もってしまう。


 そして、意を決したように顔を上げる。


「あ、あの……わ、わたし、今日からお兄ちゃんのペットになることにしたんです!」


「……へ?」


 思わず変な声が出てしまう。


 しかし、凛花は真剣な眼差しで俺を見つめながら。


「ですから、わたしの飼い主になってください!」


「いや、ちょっと待て、凛花。言っている意味がわからないんだが……」


「だから、わたしはお兄ちゃんのペットになりたいのです!」


 どうやら、冗談やドッキリではないようだ。


 それにしても、凛花が突然こんなことを言い出すなんて、なにがあったのだろうか?


「なあ、凛花。なんでそんなことを言い出したんだ?」


「だって、最近お兄ちゃん、全然構ってくれないんだもん……」


 と、拗ねたような口調で言った。


 確かに最近は受験勉強に追われていて、あまりかまってあげられなかったかもしれない。


 だが、それとこれとは関係ない気がするのだが……俺が困惑していると。


「だ、だから、わたしがお兄ちゃんのペットになれば、きっといっぱいかわいがってくれると思って……」


 と、凛花は上目遣いで言ってくる。


 なるほど、そういうことだったのか。


 つまり、寂しいから俺に構ってもらおうとして、ペットになりたがっているということらしい。


 まあ、理由はわかったけど、だからといって、すぐに納得できるものではない。


 というか、そもそも俺には凛花を飼う資格なんてないしな。


 でも、ここで断るのも可哀想だし、どうしたものかと考えていると。


「ねえ、ダメかな……?」


 凛花は、さらに懇願してきた。


 その瞳には、うっすらと涙が浮かんでいるように見える。


 これは、まずいぞ。


 このまま泣かれでもしたら、また家族会議になってしまうので、俺は渋々了承することにした。


「はあ、わかったよ」


 俺が溜息交じりに言うと。


「ほ、本当!?」


 と、凛花は嬉しそうに言った。


 「やったー!!」


 と、言いながら抱きついてくる。


「ちょっ!? お、おい、離れろって!」


 俺が慌てて引き剥がそうとすると。


「やだ! もう絶対に離れないもん!」


 と言って、さらに強く抱きしめてきた。


「ぐえっ!?」


 あまりの締め付けの強さに、変な声が出てしまう。


 ていうか、力強すぎだろ!


 俺はなんとか逃れようと必死にもがくが、凛花の腕は全く緩まない。


 このままでは窒息してしまうと思い、最後の手段に出ることにした。


「いい加減にしろ!」


 俺は大声で怒鳴ると、思いっきり頭突きをした。


 ゴツンという鈍い音が部屋中に響き渡る。


「いたっ!?」


 すると、凛花は小さく悲鳴を上げると、ようやく腕の力を緩めてくれた。


 俺はその隙を逃さず、すかさず距離を取る。


 そして、息を整えながら。


「いいか、凛花。よく聞けよ」


 と、言い聞かせるように話し始めた。


「お前がいくら寂しくても、俺はお前を飼えないんだよ。わかるよな?」


 しかし、凛花は涙目のまま俯いているだけで、返事をしない。


 なので、もう一度同じ言葉を繰り返す。


「だからさ、もうこんなことは――」


「違うもん!」


 突然、凛花が大きな声を上げた。


 俺は驚いて口を噤む。


「えっ?」


「お兄ちゃんは勘違いしてるもん!」


 そう言うと、凛花はキッと俺を睨みつけてきた。


「な、なにをだよ?」


 俺は少し気圧されながらも尋ねる。


 すると、凛花は顔を真っ赤にしながら叫んだ。


「わたしはペットじゃなくて、恋人になりたいの!」


「……へ?」


 またもや素っ頓狂な声を上げてしまう。


 い、今、なんて言ったんだ?


 聞き間違いでなければ、「恋人」とか聞こえたような気がするんだけど……いやいや、まさか、そんなはずないよな。


 一瞬、自分の耳を疑ったが、さすがにそれはないだろうと否定する。


 そんなことを考えている間も、凛花は顔を真っ赤にしてなにかを呟いていたが、やがて意を決したように顔を上げると、再び俺の目を真っ直ぐ見つめながら言った。


「わ、わたし、お兄ちゃんのことが好きです! だ、だから、わたしと付き合ってください!」


 その言葉を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になった。


 ――ど、どういうことだ!?


 なんで凛花が俺のことを好きだと言っているんだ!?


 いや、そもそも兄妹で付き合うなんておかしいだろう!!


 それに、もし仮に付き合ったとしても、世間からどんな目で見られるかわかったもんじゃないし、両親にもなんと言われるかわからないぞ。


 俺が混乱して固まっていると、凛花はさらに畳み掛けてくる。


「そ、それにね、お母さんから聞いたんだけど、ペットになるには飼い主さんにちゃんとかわいがってもらわないとダメなんだって。でも、わたしには、ほかに飼い主になってくれそうな人はいないし……」


 そこで言葉を区切ると、潤んだ瞳で俺を見つめながら。


「だからね、わたしがペットになってあげる代わりに、わたしを飼って欲しいの……」


 その瞬間、俺の中でなにかが弾けたような気がした。


「……そうか」


 俺が小さく呟くと、それを聞いた凛花の表情が不安そうに曇る。


 だが、次の瞬間、俺は凛花の肩を掴むと、強引にベッドに押し倒していた。


 そのまま覆い被さるような体勢になって、そして――。

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