神は我々を試しているのか?
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神が実在し、また、その存在が信仰によって成り立っているのであれば、その存在は、やはり、物質界に干渉できるだけの、物理的な存在であるはずだ。
つまり、物質界に影響を及ぼすために、なんらかのエネルギーを消費していると推測できる。
では、そのエネルギー源は、なんだろうか?
それは、おそらく、人間の精神だ。
人間は、様々な感情を発露する生き物である。
喜びや悲しみ、怒りや恐怖といった感情は、人間にとって不可欠なものだ。
しかし、この感情が過剰になれば、人間は精神的に病んでしまう。
そこで、その過剰な感情エネルギーを消費しているのだと考えられる。
だが、もし、そうだとすると、神は人間に精神的エネルギーを供給していることになる。
なぜ、そんなことをする必要があるのか?
もちろん、人間をコントロールするためだろう。
そして、その支配には「恐怖」という要素が非常に重要なのだ。
宗教家たちが、しばしば口にする「神の愛と試練」という言葉は、実は、ここに端を発しているのかもしれない。
さらに言えば、神が人間に精神的なエネルギーを供給する理由は、もうひとつある。
それは、人間が持つ「負の感情」を、エネルギーとして回収することだ。
これは、私の想像に過ぎないのだが、神というのは、もしかすると、一種のコンピュータのような存在なのかもしれない。
まあ、それはさておき、ここで注目したいのは「負の感情」とは、なにもネガティブなものだけではないということだ。
よく考えてみてほしい。
たとえば、恋人に振られたり、失恋したりしたとき、人は必ず大きなショックを受けるはずだ。
しかし、そのとき、果たして、その人の持つポジティブな感情が、すべてなくなってしまうだろうか?
答えは否だ。
どんなにつらい経験でも、それが過ぎれば、いずれ、思い出に変わる日が来る。
いや、むしろ、時間が経つにつれ、ますます強く記憶に残るようになるかもしれない。
そう考えると、人の持つ感情のすべてが神への供物となるわけではないことがわかる。
中には、プラスになるものも含まれており、逆にマイナスになるものもあるのだ。
さて、ここまで読んできて、もう気づいた人もいるかもしれないが、神がもたらすものは、物質的なものではなく、もっと精神的なものである可能性が高い。
ということは、神という存在自体が精神的なものと言えるのではないだろうか。
そして、そうであるならば、物質界に干渉するために消費されるエネルギー量は、ごく微量であり、かつ人間の精神に影響を与えることができるだけの影響力を持っているということになる。
言い換えるなら、神は人の思考に直接影響を与えることができ、また、人が抱いている強い感情を増幅させることができるのだ。
以上のように考えると、人間が抱く、あらゆる感情――喜怒哀楽はもちろんのこと、恨みや嫉妬といった負の感情までもが、神にとっては、とても重要なエネルギー源であるように思える。
では、どうして、神は、そのようなことを行うのだろうか?
考えられる理由は、ひとつしかない。
すなわち、人類を支配しやすくするためだ。
まず、前提として、この世界において最も力のある存在……それは間違いなく人間だ。
これは、誰もが認めるところだろう。
実際、私たちは、これまで数多くの動物を殺し、あるいは利用して生活を豊かにしてきた。
私たちの祖先が長い年月をかけて成し遂げた成果なのだ。
このように考えていくと、神の存在などなくとも私たち人間は自分たちの力で繁栄していくことができるように思える。
しかし、実際にはそうはならなかった。
なぜかといえば、そこには、ふたつの理由が挙げられると思う。
第一に、神がいなければ、人間同士の争いを止めることはできないということ。
第二に、たとえ、どんな環境であろうとも、生き抜いていける生物は地球上に存在しないであろうということだ。
これらのことは、おそらく現在の地球の状況を見れば明らかだと思う。
現在、世界の人口は七十億を超え、しかも、そのほとんどが都市部に集中している。
つまり、彼らは皆、狭い空間に押し込められているのだ。
このような状態が長く続けば、当然ながら様々な問題が発生することだろう。
もちろん、食糧不足の問題もあるだろうし、水の供給が滞れば、伝染病などのリスクが高まることになる。
さらに、人口密度が高くなればなるほど、犯罪発生率も高くなるはずだ。
ほかにも、自然災害による被害なども考えられよう。
確かに、そういった問題は決して軽視できないものだ。
しかし、それでもなお、私たちが生きているのは、やはり、神のおかげなのである。
もし仮に、なんの力も持たない普通の人間だけで世界が構成されていたなら、今ごろ、人類は滅亡していたに違いないのだから。
要するに、人間に生存本能がある限り、そして、それを司っている脳の機能が強化されている限り、人々は争うことを止めないだろうということだ。
現に、私は今、こうして文章を書いているわけだが、この行為もまた、私の持つ生存本能のひとつにほかならないのである。
だから、もしも、神が人々に生きるための知恵を与えなければ、きっと、人類の歴史は今とは違ったものになっていたはずだ。
いや、そもそも、人類の文明すら生まれなかったかもしれない。
そうなると、いったい誰が、この世界に誕生したのか? 言うまでもなく、神様だ。
したがって、結局のところ、すべての原因は、神にあると言えるのかもしれない。
少なくとも、私にはそう思えるのだ。
なぜなら、人間が生まれてから現在に至るまでの間に蓄積された負の感情は、全て、神のエネルギーとして消費されているはずなのだから。
いや、もしかすると、それだけではないのかもしれない。
もしかしたら、神は、人間たちを試しているのではないか?
「お前たちが本当に生き残るべき存在なのか?」と……。
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