魂について考える


  *


 魂は存在しない。


 その理由は、僕たちは脳で感じるものを魂と呼んでいるからだ。


 そして、その脳が魂として僕たちを人間たらしめている。


 そもそも、魂とは、なんなのだろうか?


 魂について考える。


 肉体とは、脳によってコントロールされる単なる器だ。


 それが魂と呼ばれるのなら、そこに宿る意識は、なんなのだろうか。


 人間の意識は、どこにあるのか?


 答えは、わからない。


 だけど、もし仮に、この肉体に宿る意識が、脳から発せられる電気信号に過ぎないのだとしたら……。


 つまり、この肉体こそが、魂の正体なのだとしたら……。


 僕の意識そのものが、脳というハードウェアに組み込まれたソフトウェアでしかないとしたら……。


 だとすれば、魂なんてものは最初から存在しないことになる。


 そんなものは、ただの幻想だとしたら、なぜ、人は心を欲するのだろう?


 自分の存在価値を、他人の評価でしか計れない人間は、なぜ、他人とのつながりを求めるのだろうか?


 あるいは、人と人との関係性を実感できない者は、どうやって心の安寧を得るのだろうか?


 ――いや、違う。


 そうではないのだ。


 きっと、それすらも、すべては脳というハードウェアが生み出す、まやかしにすぎないのだ。


 では、なにをもってして、自分という存在を証明するのか?


 記憶?


 思い出?


 それとも、もっと別のなにかなのか?


 いずれにせよ、今ここでいくら考えたところで、答えなど出るはずもない。


 ならば、今は、ただ進むだけだ。


 その先に、たとえ、どんな結末が待っていようとも、もう迷わない。


 なぜなら、今の僕には、僕を僕たらしめる確かなものがあるのだから。


 だから、恐れることは、なにもない。


 僕は僕自身の意志で第一歩を踏み出していく。


 その先にあるであろう、本当の未来へと――。

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