人生に価値を決めるのは、キミ次第


  *


 人生に価値はあるのだろうか?


 俺は、俺の人生は今のところ、無価値だった。


 中学校で、いじめられていたから。


 だが、それでも生きなければならない。


 嫌になってきたので、高校で知り合った同級生の彼女に、その複雑な感情をぶちまけることにした。


「俺……もう嫌だよ……」


「……そうだね」


 俺が弱音を吐くと、彼女は優しく頭を撫でてくれた。


 彼女の優しさが身に染みる。


「でも、キミが死ぬのは、もっと嫌。だから、今は耐えて。いつか必ず、キミのことを愛してくれる人が現れるから」


「そんなの現れるわけないだろ!! だって、こんな俺に誰が好き好んで惚れるんだ!? 俺はクズで、ゴミで、どうしようもない奴なんだ! 愛される資格なんてないんだよ!!」


「そんなことない!!」


 彼女は大きな声を出し、俺を叱った。


 そして、俺の両頬に手を添えた。


「キミはクズなんかじゃない。確かにキミは過去に、いろいろあったかもしれない。だけど、それはキミのせいじゃないでしょ? 自分を卑下しないで……」


「……ありがとう」


 彼女に励まされ、少し元気が出た。


 しかし、すぐにまた暗い気持ちになってしまった。


「なぁ、本当に俺なんかを好きになってくれる人がいるのかな?」


「うん、いるよ。きっと、どこかに」


 彼女がそう言った瞬間、俺は思わず吹き出してしまった。


 なぜなら、その根拠の無い発言があまりにも彼女らしかったからだ。


「な、なんで笑うの!?」


「いや、ごめんごめん。でも、キミのそういうところ好きだよ」


「えっ? そ、そう? えへへへ」


 俺が褒めると、彼女は嬉しそうに笑った。


 そんな彼女を見て、俺も嬉しくなった。


「よし、じゃあ、そろそろ帰るか」


「うん」


 俺と彼女は立ち上がり、家に向かって歩き始めた。


 そして、彼女の家の前に着く。


 すると、彼女は突然、立ち止まった。


「どうした?」


「あの、最後に、ひとつだけいい?」


「なに?」


 彼女は、いきなり抱きついてきた。


 そして、そのままキスをした。


 突然のことに驚き、しばらく硬直してしまった。


 しばらくして、我に返り、慌てて彼女を引き剥がした。


「お、おまえ、なにを……」


「ふふっ、ファーストキスだよ」


 彼女は、いたずらっぽく笑い、唇に指を当てていた。


 その仕草にドキッとした。


「じゃあね、また明日」


 そう言って、彼女は家の中に入っていった。


 ひとり残された俺は、呆然と立ち尽くしていた……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る