あなたは占いを信じますか?
*
「あなたは占いを信じますか?」
「えっ? うーん、そうだなぁ……。あんまり俺は、そういうのは信じないほうかな」
「そうなんですか!? 意外です!」
「そ、そうか?」
「……私も占いとかあまり信じるタイプではないのですが、実は今日から新しい占いを始めたんですよ」
「へぇ……どんな占いなんだ?」
「それはですね――『運命の人』を見つけることができる占いです!!」
「…………えっと、『運命の人』を見つける占い?」
「はい! 私の友達で恋愛に興味がない子がいたんですけど、その子にもこの前占ったら、その日に彼氏ができたらしいですよ!」
「そ、そうなんだ……」
いきなりなにを言い出すのかと思ったが、どうやら冗談を言っているわけではないようだ。
確かに、そんな占いがあったとしても、おかしくはないと思う。
しかし、本当にそんなものがあるとしたら……ある意味、俺にとってはかなり都合がいいかもしれない。
「それでですね。ぜひともその占いを受けてほしいんですけど、いいですか?」
「ああ、もちろんいいよ。それじゃあ早速お願いしようかな」
「本当ですか!? ありがとうございます! では、さっそく準備しますね!」
嬉しそうにしながら彼女はカバンの中からタロットカードを取り出す。
そして、慣れた手つきでカードを並べていく。
「それでは始めますね。まずはカードを見てください」
言われるままにカードの山を見る。
そこには様々な絵柄が描かれたカードが置かれていた。
「これがあなたの運命を決めることになります。なにか感じたりしませんか?」
「うーん……特になにも感じないかな」
「そうですか。なら、次に質問させてもらいますね。あなたはなんのために生まれてきたと思いますか?」
「なんのために生まれたか?」
いきなり難しいことを聞かれてしまった。
正直言って、自分が何者なのかなんてわからない。
だけど、もしも俺が生まれた理由があるとするならば……。
「……大切な人の幸せを守るため」
「……えっ? 今なんと言いましたか?」
しまった!
つい心の声が出てしまっていた!
俺は慌てて誤魔化そうとするが、それよりも先に彼女が口を開いた。
「やっぱりそうなんですね!! よかった~。私以外にもいたんですね、同じ考えを持っている人が!」
「お、おお……。そ、そうだな」
……とりあえず誤魔化せたみたいだな。
ホッと胸を撫で下ろしていると、彼女は目を輝かせながら俺の顔を見つめてくる。
「私もですね、大切な人を守るために生まれたと思っています!」
「……俺と同じだな」
彼女の頭を優しく撫でると、驚いたように目を見開いた後で頬を赤く染めていく。
「ふぅ……落ち着くなぁ……」
「ふぇっ!? ……そ、そうですか?」
「……ん? どうかしたのか?」
急に顔を背けた彼女に尋ねると、彼女は慌てた様子で手を振った。
「い、いえ! なんでもありません!」
「……? まあ、いいか。それより、占いの続きをお願いしてもいいかな?」
「あ、はい! わかりました!」
……それから数分後。
ようやく落ち着いたのか、彼女は再び真剣な表情に戻った。
「これで占いは終わりです。結果は明日、伝えますので、必ず来てくださいね」
「わかったよ。わざわざありがとね」
「いいんですよ。これは私の自己満足ですから。それでは、また明日、会いましょうね」
美月さんは笑顔を浮かべたあとで小さく頭を下げてから教室を出ていった。
ひとり残された俺は椅子から立ち上がり、大きく伸びをする。
「さて、俺も帰るとするか……」
誰もいなくなった静かな廊下を歩き、下駄箱へと向かう。
「……やっぱり、俺の考えなんて全部わかってしまうのだろうか?」
彼女にわかってほしい気持ちはあれど、少しだけ焦りを感じていた――。
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