★『忘れたい記憶、消します』発売記念★ 白瀬あお氏インタビュー
2023年6月15日に富士見L文庫より刊行される『忘れたい記憶、消します』。
発売を記念して、著者の白瀬あおさんにお話をうかがいました。
裏側を知ることで、いっそう作品が楽しめること間違いなしです。
本作は第5回富士見ノベル大賞で佳作を受賞した作品です。
最後には、富士見ノベル大賞の応募を考えている皆さんへのメッセージが!
作家デビューを目ざす方にとっても必見の内容となっています。
イラスト:hiko
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――刊行される作品はどんなお話ですか。
触れた相手の記憶を抜く異能を持つ主人公が、幼なじみとの再会を機に「忘れたい記憶」を持つ人々の記憶を抜いていく現代ファンタジーです。
異能ゆえに自分に自信がなく、他人との関わりにも慎重だった主人公のかえでですが、記憶の抜き出しを依頼する人々との交流によって、その心に変化が生じていきます。
他方、かえでは過去に、あることが原因で幼なじみの記憶から自分にまつわる記憶を消しています。そのかえでと、自分を忘れた幼なじみとの関係性がどう変化していくか……というところも、あわせて楽しんでいただけたら嬉しいです。
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――作品内のお気に入りのキャラクターとその理由を教えてください。
どのキャラもそれぞれに不器用なところがあり、愛おしく思いながら書いていました。かえでは生き方そのものが不器用ですし、幼なじみの蒼は他では苦労したことがないのに、かえでへの伝え方は下手だったりする。
そんな二人の前に登場した蒼の友人の五葉は、持ち前の大らかな性格で場の空気を軽くしてくれたので、個人的にはお気に入りのキャラです。五葉は蒼のツッコミにもどこ吹く風でしたし(笑)。
お話の本筋からずれるので削ったシーンも多いのですが、蒼と五葉のわちゃわちゃは書いていて楽しかったです。
イラスト:hiko
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――賞への投稿時、作品を書くにあたってどんなことを大事にしましたか。
作品の向こうに読者のかたがいらっしゃるということを、常に意識していました。読んでいただくのですから、当然といえば当然ですが。
「記憶」という、曖昧で目に見えないものを題材にしたので、いつも以上に「この提示の仕方、書き方で読者のかたに伝わるのか」と自問し続けました。まず伝わらなければ、楽しんでもらえないと思って。
コンテストである以上「審査」の視点が含まれるとはいえ、せっかく読んで頂くのですから楽しんでもらいたい、そしてこの作品をとの出会いをよかったと思ってもらいたい、という思いが強かったと思います。
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――富士見ノベル大賞に応募したきっかけを教えてください。
Webで追いかけていた大好きな作家さまの作品が書籍化されたのが、富士見L文庫さまの作品に触れるきっかけでした。
それからも私の好きな作家さまの作品が次々に刊行され、さらにそこから他の作家さまの作品も読むようになり、このレーベルは私の好みを知りすぎている、もしや私のためにあるのでは!?と勝手な思いを抱くまでに。
その思いが、いつか私もここで書けたら、という憧れに変わるのは、私にとっては自然な流れでした。
ただ、憧れが目標へ変わり、そして目標のための行動へ移すまでにいたったのは友人のおかげです。応募しなきゃ始まらない、と背中を押してもらいました。
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――応募が完了したときや受賞の連絡を受けたときのお気持ちを教えてください。
原稿を提出したときは、無事に完成させて応募までこぎ着けた達成感でいっぱいでした。
二、三日ほどはその余韻に浸り、そのあとふり返って誤字を見つけてしまったときは(チェックしたはずなのに!)悶々として……としばらくは感情が忙しかったです。でも、今さら悩んでも何も生まれないと気づいてからは、次のお話に頭を切り替えました。
受賞連絡を頂いたときは、頭が真っ白でどう受け答えしたのか記憶があやふやです。
実感も全くなく、間違いだったらどうしよう、明日には取り消しの連絡がくるかも、としばらく怯えていました。サイト上に自分の名前が出てからも、訂正されたらどうしようと怯える始末で……担当さんと打ち合わせまでさせて頂いてから、ようやく実感が湧いたように思います。
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――改稿の過程や編集との打ち合わせの中で印象に残っていることはありますか。
改稿の方針をすり合わせる前に、担当さんから作品に対するコメントをまとめた資料を頂いたのですが、すごく深く読みこんだ上で、より良いものにしようとしてくださる熱量が伝わってきて感激しました。
打ち合わせの第一声で頂いた感想にも、実は嬉しくて泣きそうになっていました。そのときは気恥ずかしさが勝って、おかしな返答になりましたが……。
一方で、ご指摘からは自分の未熟さも痛感させられましたし、課題もたくさん見つかり、もっと精進しなければと奮起しました。
刊行される作品は応募原稿からは大幅に改稿していますが、担当さんの熱量がなければここまで辿り着けなかったと思います。
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――これからどんな作品を書いてみたいですか。
等身大の主人公が頑張って、周りの人々に助けられもしながら変わっていくお話が好きです。さらにはその中で胸がぎゅっとつかまれたり、キュンとできたりもすれば、読者の私としては最高です。ジャンルはなんでも大歓迎、なんでも読みますし好きです。
だから作者の私としては、ジャンルなどにはとらわれずにどんどん挑戦しながら、上に書いたような「好き」の芯をお話に起こしていきたい。「好き」自体の幅も、これからもっともっと広げたいですし。
たとえささやかな笑い一つであっても、そのおかげで明日も頑張ろうと思える、ということはあると思います。または、ただ「色々あったし疲れたけど、悪くない一日だった」と今日を肯定できるときもあるのかな、と。私自身はこれまで、物語からそういう力をたくさんもらってきました。
だから私も同様に、笑い一つ分でも心が動いて、なにかしらの力にしてもらえるような作品を書きたい。どんなジャンル、内容であれ、そこはこれからも忘れずにいたいと思います。
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――富士見ノベル大賞に応募しようとしている方へのメッセージをお願いいたします。
他の誰かではない、自分自身が好きなものや感じた思いは、何にも勝る力をくれる。それが、受賞させて頂いてもっとも強く抱いた実感です。
これは私の場合ですが、ウケを狙って書いたときはたいてい上手くいきませんでした。
流行りの題材、皆が好きな設定のはずなのに、なぜウケないのかと肩を落とすこと多々……。
決してウケを狙うなという話ではなくて、私に関して言えばそこに自分という個性や熱意が足りなかったのだと思います。
ですから、精進中の身で言うのもおこがましいのですが、自分自身の「好き」をまず大切にしてみてください。
その「好き」を突き詰めて、他の人にも受け入れられるように工夫すれば、きっとその思いは伝わります。
富士見L文庫の皆様は、その思いをちゃんと受け取ってくださる方々ですから!
気になった方はぜひ書籍を手に取ってみてください!
詳細は下記特集ページよりご覧いただけます。
https://lbunko.kadokawa.co.jp/special/award5_winner/
忘れたい記憶、消します 白瀬あお/富士見L文庫 @lbunko
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