第9話 ジブルタル沖海戦

西暦2025(令和7)年10月10日 ヒスパニア帝国南部 ジブルタル沖合


 何処までも広がる様に見える海の上を、8隻の護衛艦が進む。護衛艦「いせ」を旗艦とする海上自衛隊第2護衛隊群は、勝利を手にするために、帝国南東部に位置する港湾都市ジブルタルに向かっていた。


「現在、ジブルタルには帝国海軍の主力艦が集結しており、空軍戦闘機による警戒もより厳しいものとなっております。間違いなく、我が国への反攻作戦に備えた戦力でしょう」


 「いせ」の戦闘指揮所CICにて、艦長の中瀬一等海佐はそう説明し、艦隊司令の松田海将補は唸る。


「主力艦隊が集められているという事は…艦隊決戦で制海権を取り戻し、陸自を本土と分断するつもりか…人工衛星に頼れない現状、取り逃がす訳にはいかんな」


「となれば、ここで一網打尽にするしかありませんね。「かが」は現在、『特別任務』のために別の場所におりますし、少ない戦力で大きな戦果を上げねばなりません」


・・・


2時間後


「敵艦隊、港湾の入口にて確認。何隻かが湾外に出ております」


「よし…SSM一斉射。港内から一歩も出させるな」


「了解」


 命令一過、7隻の護衛艦より一斉に艦対艦ミサイルが発射。港湾の入口付近に錨を降ろす巡洋艦に向けて飛翔する。


 数分後、50キロメートル先にいた巡洋艦に火柱が上り、それを合図として護衛隊群は接近を開始。水平線上に港が見え始めるや否や、砲撃を開始した。


 多数の12.7センチ砲弾が飛翔し、港湾施設や湾内の艦船に降り注ぐ。一発当たりの破壊力は低いものの、巡洋艦に損害を与えるのには十分過ぎたし、飛んでくる砲弾も一発だけではなかった。


 斯くして、第2護衛隊群はヒスパニア帝国海軍の反攻作戦用戦力であった主力艦隊をジブルタル港に閉じ込める事に成功。戦闘後には潜水艦が試作機雷を展開し、敵水上戦力の封じ込めに成功したのである。

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東洋国家共同体奇譚 広瀬妟子 @hm80

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