第5話 ヒスパニア外征
西暦2025(令和7)年
日本国と周辺地域が未知の異世界に転移して1か月。資源面での状況とそれに伴う貧困、そしてその結果である治安の悪化は深刻なものへと変わっていった。
まずエネルギーであるが、北陸や樺太の油田が生命線となっている現在、環境保全団体や反原発団体からの反発を黙殺する形で全ての原子力発電所を再稼働。太陽光発電所は『転移』時の異常現象で大半が壊滅し、この期に及んで再生可能エネルギーが全てを解決してくれるなどと主張する者は殆どいなかった。
続いて食料は、エネルギー以上に深刻であった。穀物は日本の国民食とも言うべき米以外は海外からの輸入に依存しており、近年は異世界人が過疎地や耕作放棄地にて小麦を生産していた事もあって、当初は左程問題視されていなかった。だがそれが余りにも甘すぎる見通しであった事は、パンや麺類、そして穀物を飼料とする家畜を原料とする畜産品の価格が急騰した事で証明されていた。
そして失業者の取り扱いも、非常に悩ましいものがあった。200万以上の失業者はすでに数万人規模が、左派運動家の扇動で暴徒と化しており、下手に彼らを軽んじれば、治安は深刻なまでに悪化する事は避けられないだろう。
度重なる資源不足の問題。国内で焙れ出した失業者。これらの問題を解決するために、リスヴィアを占領したばかりのヒスパニアに活路を求めるのは当時の日本としては至極当然の発想であった。
手始めに投じられたのは、陸上自衛隊西部方面隊に属する第4師団であった。西部方面戦車隊や西部方面特科隊も増援として投入し、現地の完全な制圧と占領地の拡大を企図。その膨大な兵力を以て、ヒスパニア帝国より広大な国土をもぎ取る事を目論んだのである。
予算については、殆ど使い道が分からなくなっていた男女共同参画費用の転用が決定された。その費用を利権として貪っていた者たちは直ちに報いを受けた。
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