第4話 リスヴォア強襲

西暦2025(令和7)年8月22日 ヒスパニア帝国南東部 パルトシア州リスヴィア


 ヒスパニア帝国は、この世界の東に位置する大陸にて、最も広大な支配領域を持つ大国である。


 今から30年前、西に幾つもの転移国家が出現し、覇権を争って戦争を繰り広げる中、その一つである『ゲルマニア王国』がヒスパニア帝国に接触。彼の国の豊富な資源を得るために、当時最新の技術や兵器を供与した事でヒスパニアは急成長を遂げ、東方地域最大の国として周辺国に影響を与えるまでに至っていた。


 そしてこの日、港湾都市リスヴィアでは、南東に300キロメートルの位置に発見された島嶼を占領するべく、新たな艦隊の編制が進められていた。


「先の戦闘では、たかだか数隻の軍艦相手に惨敗した。だが今度の戦力は、確実に勝利を狙えよう」


 艦隊旗艦の艦橋上で、ジモン提督は呟く。帝国海軍の数的主力を担う巡洋艦8隻に、4隻の輸送船護衛を担当する駆逐艦4隻。巡洋艦の圧倒的な砲力で敵艦隊を磨り潰し、制海権を握るのがヒスパニア海軍の基本戦術であり、ジモンはこの戦い方で負ける筈などないと考えていた。


 だが、相手の能力は彼らの想像を遥かに上回っていた。


・・・


 日本列島と最も近い位置にあるリスヴィアとの距離は、直線距離で300キロメートル程。空中給油機を用いれば、航空自衛隊の戦闘機も十分に届く距離であった。


「攻撃開始せよ」


 命令一過、10機の〈F-15J〉戦闘機がリスヴィア上空に舞い上がり、哨戒飛行を行っていた敵レシプロ機を照準。そして99式空対空ミサイルを発射し、数分後に撃墜する。


 即座に制空権を握った後は、2機の〈F-2〉戦闘機が敵基地へ降下し、そして滑走路目掛けて227キロ航空爆弾を投下。爆轟と同時に滑走路に大穴が開き、続けてもう2機が降下。通過する瞬間に爆弾を落とし、ハンガーを破壊する。


「空自攻撃隊、敵飛行場を破壊しました」


「よし…洋上の敵船団に向け、SSM発射。一気に勝負をかけるぞ」


 続けて7隻の護衛艦が前に出て、港を出ようとしていた艦隊に向けて一斉に艦対艦ミサイルを発射。亜音速の一撃は巡洋艦を一撃で港に沈めるには十分すぎる威力であった。


・・・


8月23日 日本国東京都


「自衛隊は戦闘により、ヒスパニア帝国を名乗る国家勢力の支配地域…港湾都市リスヴォアを占領しました。現地には住民が取り残されており、監視下に置いておりますが、今のところ反乱を目論む動きは確認されていないとの事です」


 須田の報告を聞き、大久保は小さく頷く。


「そうですか…では、次へ進みましょう」


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