第13話 極徒 -キョクト-

 「……。」


 黒崎はものすごい速さでカイと東に斬りかかった。カイは老婆から覚えた反応速度でカウンターを狙った。


 「!?」


 東の方も少し切られたが、すぐに体勢を立て直し、反撃をした。カイのカウンターに動揺してた黒崎は東の一撃により顔に大きな傷を残しすことになった。


 「クッ。」


 一歩下がろうとする黒崎を東は糸で縛り上げた。

  

 「これは、妖奇の!?」


 「今だ。カイ。」


 「ああ。任せたぜ。」


 カイは洞窟の元へ走り出す。


 「あ、あのクソガキ。」


 「やたら大きな口調で喋る前に、この状況をなんとかしてみたらどうですか?」


 「ハッ。いい度胸だ。殺してやるよ。」


 






 カロンは妖奇の糸をかわしつつ糸に触れていった。


 「嬢ちゃん。お前は雑魚狩りを頼む。」


 「はい。」


 「フッ。相当弱体化してるな。妖奇。今のお前なら俺1人でも相手にできるぞ。」


 「フフフッ。どうかしらね。」


 妖奇の糸は周囲に広がっていった。そしてビル街を覆い尽くしていった。

 

 「何を、してるんだ……。」


 「機獣の能力を応用した技みたいなものは色々あるわ。でもこっちは知られてないでしょ。機獣の能力を限界まで高めた末に到達できる人と機獣の極致。」


 「極徒 狂月。」


 「極徒、機獣と人の行き着く限界と言われている。極徒による技は他の技など比べ物にならないほど強力。だが、発動したら自分自身にさえ負荷がかかる。諸刃の剣。そんなもん俺ごときに使ってくれるなんて、嬉しいなぁ。」


 「フフッ。全ては計画のため。」


 妖奇の糸は纏わり付いたあらゆる物体からエネルギーを奪い取った。周りにいた千夜の戦士に、機獣やブラッドの戦士までから力を奪い取った。


 「クッ。周りの奴らの反応的に、糸に触れた時点で、アウトか。」


 カロンは汗を流す。


 「フフッ。本当の恐怖はここからよ。」


 妖奇の顔の右半分は右は機獣により覆われた。

 

 「フフッ。」


 突然、妖奇の右目から飛び出した赤黒い光、それはかすっただけでカロンの左腕を焼いてしまうほどの威力だった。


 「周りから奪ったエネルギーを高出力のビームとして打ち出すのよ。」


 「ハッ、無敵かよ。」


 「フフフフフッ。まだまだよ。」


 妖奇により力を取られた機獣や戦士たちは、一斉にカロンの元へ動き出す。


 「私にほとんどのエネルギーを取られた彼らは動くことしかできない。でも、彼らには特徴があってね、彼らもまた自分と触れ合うもの全てからエネルギーを奪い取れるの。フフッ。」


 「……。糸に、ビームだけでなく、狂ったように雑魚が集まってくる。めんどくせえ。そんな能力ありゃ人生安泰だろうよ。もう一度問う。お前、東で何を企んでる?」


 「私はあれの力を確かめにきただけよ。」


 妖奇は黒崎と激闘を繰り広げる東の方をチラリと見る。


 「確かめてどうする?」


 「まだ力を使いこなしてないうちに、私の糸で彼を操り人形にする。」


 妖奇は東を見ながら笑う。


 「そうすればこの先でどれだけ彼が強くなろうと私の言いなり。彼を使い、かつてゾーアがやったように力で人々をまとめあげる。そしていずれは帝国やお前らをも取り込み、最強の国をつくる。」


 「国を、つくる?」


 「ええ。そして国民全員を私の糸で操る。」


 「!?」


 「フフッ。素敵じゃない? 彼らは皆、争いなんかなく幸せに生涯を終えるのよ。戦争なんて絶対起こさせはしないわ。お仕事も恋人も全部私が決めてあげるの。そして皆が私のために動くの。皆が私のことを認めてくれる。」


 「ヘッ、認めて欲しいのか? そんな目的ならよ、さっさと家帰ってままごとでもしてりゃいいだろ。」


 「……。私だって、ずっとそうしていたかったわ。」


 次の瞬間、カロンの足元に妖奇の糸が纏わり付く。


 「しまった!!」


 「フフッ。大丈夫。あなたに危害は与えないわ。あなたに見せてあげるわ。」


 「……。何を?」


 「フフフッ。」

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