第12話 迷子
ブラッドとの戦いも5日目となった。
カイの傷も完全に回復し、敵を倒し続け、果てしないビル街を進んだ。そしてついに、あの洞窟の前までたどり着いた。
「……。本当に久しぶりだな。」
カイが東の肩を叩く。
「うん。そうだね。」
「で。このまま私たちだけで乗り込む訳ではありませんよね。」
「ああ。その通りだ嬢ちゃん。このままここで戦力が揃うまで待機だ。途中で戦死した奴らも少なくはないだろう。この島に導入した戦力のうち3分の1が揃った時点で、特攻開始だ。」
「それまで敵が待ってくれるといいですがね。」
「だから班ごとにバラバラで突撃したんだ。早くたどり着いた班っていうのはそれだけ強い班ってことだからな。暁さん辺りは確実にもう着いてるだろう。」
「あ、あの~」
肉体的にはカイたちより5歳ほど若い中性的な顔立ちの少年が話しかけてきた。千夜の軍服を着ていることから味方であることは間違えなかった。
「どうしたんだ?」
「失礼ですが。ここって何班ですか?」
「? ここはこの俺カロンの班だぞ。」
「カ、カロンさんの。えっとじゃあ僕の班は、」
「……。もしかして迷子か?」
「は、はい。」
「名前は?」
「風音零です。」
「カザネレイ!? ってことは、お前の班、俺たちの戦場から一番離れたところだぞ。どんだけ遠回りしてきたんだよ。」
「はぁ、だから班長なんてやりたくなかったんだよ。」
「班長が迷子になるなよ。」
「何だ? お前ら。もうこんなとこまで来てたのか。」
ブラッドの戦士たちがカイたちを発見する。
「えっとこいつら敵だよね。」
零はブラッドの戦士に手を向ける。次の瞬間、衝撃波が発生し、敵はビル街ごと吹っ飛ばされていった。
「こりゃまた派手に。これじゃあ敵にバレちゃうだろ。」
「あ、」
「何だ? 今の音は。敵だな。」
洞窟からブラッドの戦士が一気に出てくる。そしてビル街からは機獣が出てくる。
「まあ、とりあえず目的地がここならいっか。じゃあみんな、武運を祈るよ。」
そう言うと零は空に浮き出し、機獣の大軍の元へ単身突撃していった。
「何だったんだ。今の。てか空飛んだ?」
「零は境遇的には東に少し似てるな。ポンコツだがあの暁さんが一目置くくらい強い。さあ、俺たちもやるぞ。」
「ついに敵が来たようです。」
包帯を巻いた男が少女に報告する。
「暁は来てる?」
「はい。」
「じゃあ戦力の8割を暁に。指揮は白猫とあなたがとりなさい。」
「御意。」
「何だ? 左の方に集まっていくぞ。これじゃあ本陣ががら空きだ。」
「暁さんに集まってるんだろ。さあ、俺らもいくぞ。」
「フフッ。来たみたいね。」
「今度は俺がガキ共とやるからな。妖奇。」
黒崎が機獣の力を解放し刃物を出す。
「ええ。異論ないわ。」
「かわいい部下たちの仇だ。どう殺してやろうかな。」
黒崎は刃物を舐め、妖奇と共に洞窟から出る。
「お出ましだな。」
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