第14話 寂しがり屋の妖奇さん
「何だ? これは。」
糸で作られた小さな舞台がカロンの前に出現した。
「わかりやすいように見せてあげようと思って。これが私で、これがお父さんとお母さんね。」
妖奇は自分そっくりな糸人形と自身の両親の糸人形を出した。
「戦争中だってのに、何を見せられてるんだか、」
「フフッ。そう言う割に抵抗しないのね。」
「したらお前、俺のこと殺すだろ。」
「フフッ。正解よ。」
「で、今から長ったるい過去話か?」
妖奇は自身の糸人形を舞台に置いた。
「当時、私の住んでいた場所は機獣にまだ見つかっていない都市だった。私は幼い頃からそういう病気でコミュニケーションが苦手だった。学校でも誰とも関わらず、ずっと1人でおままごとして遊んでいたわ。」
「そんなある日ね、母は私に綾取りを買ってくれた。私は母がくれた綾取りでずっと遊ぶようになったわ。その成果もあって私は綾取りがすごくうまくなったわ。そして私は綾取りのせいでクラスの皆からチヤホヤされるようになったわ。そしてある日に私ははじめて遊びに誘われたわ。」
舞台が家の中から森へ変わった。そして妖奇と数人のクラスメイトで森へ入っていった。
「私は森の中は危ないからやめようと言ったけど、皆について行くしかなかった。私は機獣に襲われた。誰も助けてくれなかった。皆は一目散に森から逃げていった。後々わかったことだけど、大して面白くもない私がチヤホヤされてるのに腹を立てた誰かの計画だったみたい。」
舞台は森から1つのベッドに変わった。
「私は何とか助けられた。その後はずっと病院で寝込んでいた。大好きだったおままごとも綾取りもできない体になっていた。喋ることさえできなかった。最初はお見舞いに来てくれた両親もすぐに新しい子供をつくって私の元へは来なくなった。元から病気のあった私のことはよく思っていなかったみたい。」
「そして何年もの日々がすぎて、隔離されていて、医者と看護師以外に来なかった私の病室に1人の男が来た。」
「もう大丈夫。」
「白装束の男はそう言うと私に何かを打ち込んだ。その瞬間、ずっと動かなかった私の体は動けるようになり、ずっと変わらなかった私の体はどんどん成長していった。」
「俺の名は白猫。お前に新しい居場所を与えてやる。」
「男はそう言うと私の前で町の人たちを皆殺しにしたわ。私の両親も含めて。」
「お前のことは調べさせて貰った。どうだ? これで満足できたか?」
「フッ。フフフッ。あなた何のつもり?」
「俺の元へ来い。俺がお前に居場所を与えてやる。」
「白猫は裏社会で有名な暗殺者。私は彼の元で暗殺者として生きることにした。暗殺者として大勢の人間を殺していく内に私は自分の能力である糸で人を操ることができることを知ったわ。」
妖奇は自身の糸をカロンに見せた。
「そして私はあの計画を思い付いた。人類全員を私が操る計画。私は独立し、多くの組織のトップを暗殺し、その残党たちを従えた。こうして私の組織はどんどん大きくなっていった。でも、」
舞台に新しい人形が入る。
「私の元に両目とも赤色の少女が現れた。敵だとすぐに悟った私は糸で彼女を拘束した。でも、彼女の絶対的な力に私はすぐに敗れた。」
妖奇の人形は少女の人形の前に倒れた。そして少女の後ろからスーツの男の人形が出てくる。
「彼女の後ろから出てきたスーツの男はタバコに火をつけながら私を帝国に入るよう言った。このまま抵抗しても彼女には勝てないと思った私は帝国に入り、何やかんやでオルキヌスオルカに入ったわ。」
舞台は崩れた。
「そして今!! ついに私は長年仕えた帝国を裏切った。私の計画を果たす日が来たわ。フフフッ。東さえ手に入れば。」
「あーあ。話し長え。」
カロンはあくびしながら言う。
「聞いてたの?」
「聞いてたぜ。もう少しお前、簡潔にまとめた方がいいぜ。要するにお前は、寂しかったんだろ。」
妖奇の笑った表情が崩れる。
「それはどういう意味?」
「ハハッ。やっとお前のにやけ面潰せた。だってそうだろ? わざわざ変なクラスメイトについていったのも、敵である俺にこんな話ししたのも寂しかったからだろ? だから人類皆を下につかせて、自分を認めて欲しかった。違うか?」
糸は崩れ、カロンと妖奇は戦場へ戻った。
「そんなことしなくても、俺がお前の友達になってやるよ。」
カロンは妖奇に手を差しのべる。
「フフフッ。馬鹿なの? 私は敵で、あなたの仲間も大勢殺したのよ。」
「ここは戦場だぜ。俺含め皆人殺しだ。俺の昔の友人がよく言ってた。大切なものを守るとき、人は本当に強くなれる。だから仲間ってのは大切だってな。」
「フフッ。合理主義なお友達ね。じゃあ、あなたを私の友達にしてあげる。私の糸で操ってあげるわ。」
妖奇はカロンに糸を伸ばす。
「喧嘩か? 上等だ。日が暮れるまでやってやるよ。」
カロンは妖奇の糸をかわしながら妖奇に近づいた。
「外はすごいことになってるわね。」
少女はグラスにワインを注ぎながら言う。
「外だけじゃねえよ。」
カイの声と爆発音が同時に響く。
「ハァ、ハァ、最後の晩餐はすんだか?」
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