オークのキ○タマ2
ベッドの上に立ち、体重をかけるようにして思い切り押さえる。
アリアの体からオーラが溢れてそれも力になる。
「ガボッ……は……はな……」
シェカルテが抵抗するが子供ながらに体重をかけてオーラまで使われると女性の力では敵わない。
どうせアリアの部屋に近づく人はいない。
激しく抵抗して水音や苦しむ声がしても誰も気やしない。
「ブッ……ハァッ!
ハァッ……ハァッ……ハァッ、このクソガキ……」
「あなたは自分の立場がわかってらっしゃらないようですね」
凍えるほど冷たい水。
アリアの力が弱まってようやく顔を上げて空気を肺いっぱいに取り込んだシェカルテが見たのはうっすらと笑いを浮かべる紅いオーラをまとったアリアだった。
それがなんなのか理解する間も無く再びシェカルテの頭は水につけられた。
だんだんと抵抗が弱くなっていく。
「ぐぅ……うっ、なんで…………こんなこと」
タライの水だけでなく涙や鼻水でも顔がぐちゃぐちゃになっているシェカルテ。
「おかしいと思いません?
この水で顔を洗ったら凍えてしまいますわ」
「だからって……」
「あなたがご理解なされないようでしたのでその身で分からせて差し上げたのですわ。
それでもまだ減らず口を叩くようでしたら……」
「……す、すぐに新しいものをお持ちします!
もうこのようなミスは致しません!」
アリアの手に力が入り始めてシェカルテは慌てて叫ぶ。
「いいわ。
早く変えてきてくださいます?」
アリアが手を離すとシェカルテはドサリと膝をつく。
空気が足りなくて頭が良く回らずぼんやりと口を開けたままベッドに立つアリアを見上げる。
「早く、なさいまして」
「は、はい!」
シェカルテはカートを押して走って出ていく。
「ふぅ……」
アリアはベッドに倒れ込む。
シェカルテが抵抗するものだからアリアもビチャビチャだ。
それに抵抗する大人を子供の力で押さえつけるのは楽じゃない。
オーラがなかったらそれすらも叶わなかっただろう。
子供の体で使い慣れないオーラも使って意外と疲労している。
もうちょっとシェカルテが根性を見せていたらアリアの目論みは失敗に終わっていた。
「オーラはちゃんと使えますわね」
ただ溢れ出すだけじゃなくコントロールが出来ている。
以前はただ隠すぐらいしか出来なかったのに。
最後エリシアを倒そうとオーラを解放した時にスキルレベルが上がった表示が見えたように思った。
だからなのかもしれない。
「どう調理して差し上げましょうか……」
突発的にシェカルテが来てされるがままが嫌だから対応したけどどうしてやろうかはまだ思いついていない。
あのまま息の根を止めてやろうとも思ったけど後処理の面倒を考えると止めざるを得なかった。
「必要なのは味方……」
ふと脳裏に言葉が浮かんだ。
1人で出来ることには限界があるのに信用できる仲間を増やしていけば個々の限界以上のことが出来ると言われた。
シェカルテのことは死んでも信用できない。
だけど仲間に引き入れることは出来る。
落ち着いてきたらシェカルテのことも色々思い出してきた。
「殺さないでいてあげますわ。
ただし私の犬にはなってもらいましょう……」
黒い笑みを浮かべるアリア。
回帰前に成し遂げられなかったシェカルテへの復讐を少し遂げて気分が良くなってきた。
「お、お嬢様!
お湯をお持ちしました!」
そこにシェカルテが戻ってきた。
タライに並々と注がれた液体に触れてみるとほんのりと温かい。
これなら気持ちよく顔も洗えそうだ。
「ご苦労様。
あなたはドアを閉めてそこに立っていなさい」
「えっ……」
「あら?
また水がおかしく……」
「い、いえ!
立たせていただきます!」
タオルを手にシェカルテは背筋を伸ばして待つ。
アリアは優雅に顔を洗う。
気持ちがいい。
気分がいい。
温めたたっぷりのお湯で優雅に顔を洗うことなんていつ以来か。
「あっ、こちらです」
先程はタライの横にタオルを置いていたのでそのままそこに手を伸ばしてしまった。
シェカルテがアリアにタオルを渡す。
文句を言うならシェカルテが優しく丁寧に拭いてやるべきだがこれまでそんなことしてこなかったから気が回らない。
ゴシゴシしなくても優しく頬に当てるだけで水を吸い取ってくれる良いタオル。
「朝食は部屋まで運んでくださいますか?」
「……承知いたしました」
ニッコリ笑ってシェカルテに命令する。
タライから顔を上げた時の冷たい顔が頭をチラついてシェカルテはどちらがアリアの顔なのか分からなくて動揺が止まらない。
いつもなら食べ残しのようなろくでもない食事しか運んでこなかったが今日はどうだろうか。
食べ残しでも構わない。
ただこれからシェカルテに対する当たりが強くなるだけだから。
食べ残しじゃなかったら厳しくしないというだけだけども。
ベッドから降りて自分の机に向かう。
元々部屋にあったもので古ぼけているけど作りは良くてガタつきもない良い机だ。
勉強のための紙とペン。
インクの瓶も振ってみると中身がある音がしている。
ただ勉強するための本も教師もいないのでこれまで無駄になっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます