第2話魔法学校に入学しました。

 私は二年前の秋に国内随一の学力を誇る国立魔法学校の試験をクリアし国立魔法学校に入学する事が出来た。


 もちろん親元を離れ寮生活を送ることになるので不安もあったが、1学年上の兄もいるので不安より期待の方が大きかった。


 本来ならポーレット侯爵家令嬢と言う身分があり誰彼問わず簡単には仲良くなることはできない。でも学校に通う五年間は違う特別な時間なのだ。

 魔法学校は身分関係なく堅苦しい礼儀作法は強いられず、先生や生徒と誰とでも気楽に話せる居心地の良い場所であった。

 その環境のお陰で積極的にクラスメイトと接することも出来て友人にも恵まれた。


 そして魔法の勉強はもちろん数学、言語、法律、歴史、マナー、剣術そして魔法の実技などがあり、毎日のように新しい発見がありとても充実した学校生活を送っていた。


 ところがニ学年の後半過ぎた頃、私の周りにいた友人達があのマグリット公爵令嬢の友人(どう見ても取り巻き)になっていた。


 近い将来、義妹になる私に嫌がらせをするのか検討もつかなかった。義理でも姉妹になるのだからと出来れば仲良くしたかった。


《まあ、彼女はそうは思っていなかったのだろう。》


 この状況は明らかにマグリット公爵令嬢の息がかかっている。

 それからは一人でいることにした。他に友人を作ったところでまた同じ事を繰り返されるかもしれない。やはり自分が大事でこれ以上は傷付きたくない。


 本来は魔法学校の規則で、身分に物言わせるのは間違っている行為だ。

 でももしその身分に負けて退学させられるのは避けたいとみんな思っているのだろう。

 卒業後は魔法を使える仕事で働きたいという強い意志でここに通っている生徒が大半のはずだ。

 しかしなかには良縁に恵まれたい為に入学する生徒もいるが、厳しい魔法学校では途中でついてこれなくなり中退か運良く卒業しても資格がなければ無能扱いになってしまう。

 例え国内随一の学力を誇る国立魔法学校を卒業してもどこも雇ってくれないという悲惨な現実が待っている。


 その後、私は一人になる時間が増えたおかげで、魔法の資格を全て取りたいと思うほどに魔法にのめり込んでいった。

 学校の図書館の魔法書を貪るように読んだ。自分に合った魔法は何か、役に立てる魔法は何なのかを毎日黙々と勉強した。自ずと魔法以外の勉強にもすすんで取り組むようになっていた。


 そのうち申し訳なさそうにしている元友人達の事も気にならなくなり、穏やかな日々を送っていた。


 だが何を思ったのか学年末テストの結果発表が行われた日にマグリット公爵令嬢が絡んできた。

 もう構わず放っておいてくれたらいいのに…正直辛い。


 学校のエントランスホールに設置してある掲示板に学年末テスト全学年分の結果が張り出された。当然と言っては何だが、友達も作らずに勉強に明け暮れた努力の成果は素晴らしいものだった。


 なんとニ学年の学年末テストで筆記と実技ともに首位を取った。

 本当はジャンプして大声で叫びたいところだが、淑女たるもの耐えて控えめな笑みをこぼした。

 すましたふりをして三学年の順位表を念のため確認した。

 やっぱりか…さすがはお兄様。入学以来ずっと首位をキープしているらしい。

 ポーレット侯爵家の直系は代々とても魔力が強く今も衰えを知らないと言われている。

 また爵位があっても魔力を持つ子孫が生まれなければ爵位を降格または返還させられる可能性もあるのだ。


 掲示板を見ながらあれやこれやと考えていた私にマグリット公爵令嬢は近づいてきたのだ。

 ルチアーナ・マグリット公爵令嬢。女性にしては背が高く細身でスタイルが良い。栗色の髪は腰まであり緩やかなウェーブヘアで身のこなしもとても上品だ。彼女の濃い紫色の瞳が私を捉える。


「ごきげんよう。アイリーシャ様。」


 さすが公爵令嬢である。完璧なお辞儀をした。私も何となく負けたくなくて優雅に見えるよう心掛けてお辞儀をした。


「ごきげんよう。ルチアーナ様。」

 良し!完璧だわ!?と心の底から笑顔でいると


「将来はわたくしの義理の妹になろうという方が、テストで不正を行ったんですって?!しかるべき処置を取らざるを得ないですわよ!」


 彼女はどうだと言わんばかりに腕を前で組み私を睨みつけたのだ。


 ん?なんでそうなるの??

 魔法学校で不正なんかしたらこの国では投獄か場合によっては死刑に匹敵するんですけど!!

 《でも死刑それはさすがにちょっと言いすぎかも!?》

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