第28話⭐︎己の気持ち




「セイラが読むその伝記は300年程前のスピカ国王

龍ノ神たつのかみ 千景ちかげ”の手記だ


本来はこの図書室にはそれ同等、いやそれ以上の古い手記や重要書物が沢山あったらしいのだ。DIVAや王族の一千年以上続く歴史に関するものだ

しかし千景王の時代に何者かによって燃やされてしまったみたいでな…守ることが出来たものがこの禁制の書棚にある本のみであった

その中でもDIVAアマテラスに関する史料は、唯一その本だけなのだ


私は5歳の頃に父からDIVAという存在を聞き、この部屋とその本を見せてもらった

それからと言うもの、何度も何度もその本を読みDIVAアマテラスに魅了されずっと会うてみたいと思うておったのだ


そなたの顔を知る秘密はこの本の最後の方にあってな…」

そう言ってそっと本をめくると“アマテラス”と書かれた肖像画が描かれていた

出てきた絵は誰がどう見てもセイラに似ていた


「これは…」

そう言って驚くセイラに響は微笑んだ


「そう…そなたにそっくりであろう

それぞれの星のDIVAは、運命によって神星ポラリスの雫を与えられDIVAになるようでな…

皆、姉妹のように似ているそうなのだ

以前、父の書斎でミラのDIVAセレーネとの写真を見かけてな、髪色や表情は違うもののこの絵にどこか似ていたのは確かだ」


「姉妹…不思議です

同じ顔で全くの別人だなんて…」


「まだ、我らも知らぬことばかりだ…

だが、幼き頃からある己の気持ちは十分に分かる…

そなたに会えて心から嬉しい」

そう言って机の上のセイラの手に響は手を重ねた

戸惑うセイラを愛しそうに見つめ微笑みかけた


「私の気持ちをそなたに知っておいてほしかったのだ

時間を取らせたなセイラ…また話そう」

セイラを確認するように、重ねた手に少し力が入りスッと離れた


遠くなり行く背中を見つめるセイラの瞳は潤んでいた




“難しいことになりそうだね…お嬢ちゃん”

外で聞いていた飛鳥はセイラの心を不憫ふびんに思っていた

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神星ポラリスのDIVAー春星スピカー 美空 煌璃 @Misora_Kirari

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