第27話⭐︎春星スピカのDIVA アマテラス




「読み終わるまで外の机で待っている…ゆっくりで良いからねぇ。メイドに飲み物を頼んでくるよ」

飛鳥はそう言ってセイラにハンカチを手渡し、図書室の方へ出て行った


涙が止まるまでその本の表紙をぼーっと眺めていると、表紙の下の方にスピカの国章が記されていた

スピカの御神木とされる満開の桜の木に、神とまつられる龍が寄り添っている

その紋章を久しぶりに見たセイラは懐かしい気持ちになっていた


ーコンコンー


「失礼します、セイラ様

フレーバーティーをお持ちしました」


「ヒバリさん、ありがとうございます」


「セイラ様、本を読む際に髪の毛が邪魔にならない様まとめておきましょう。ヒバリにお任せください」

そう言って白いリボンのバレッタを手に持っていた


「あの…何から何まですみません」


「いえ、飛鳥様が今日の素敵なお召し物に似合う髪留めをと…

もしよろしければ、明日も私にヘアメイクさせて下さいね


セイラ様のメイドになれて、こうしてお姫様に仕えている様でとても嬉しくて楽しいのです」

ニコニコとして優しく髪の毛に触れる手が、セイラは嬉しかった


「うふふ、ヒバリさんが大変でなければお願いします

あまりやった事がなくて…」


そうしてる間に

“はい、出来ました”と声がした

彼女が机の上に手を置き

「ミロワール」

と言い、手を上昇させると鏡が現れた

セイラは目の前に急に現れた自分の顔にびっくりしてしまう


しかし、小綺麗にハーフアップにまとめられた髪の毛は薄いピンクのワンピースに似合っている様に見えた


「とてもいい感じです…ありがとうございます」

そう恥じらいながら伝えると、ヒバリはニコッとほほ笑み鏡を消して出て行った



飛鳥の気遣いのお陰で、少し気分が晴れやかになったセイラは本に向き合う事にした


スピカのDIVAと書かれた本は国立図書館で読んだ物と違い、しっかりと事実が書かれているようだった



ーーーーー

スピカに生まれしDIVAはその名をアマテラスと呼ぶ

神星ポラリスの加護を受けしその者は左右異なる瞳とモルガナイトの様な髪を持ち、動くさまは可憐に舞う桜の花弁はなびらの様であった

その者が訪れた場所は、空は澄み渡り花が咲き人々を安らげ平和に導いた

どうやら万物の声を聞き天候を操れると聞く


アマテラスは眩く輝く子供と小さな白い兎を連れていた

それは神使と言いポラリスの使いであり、かの者に忠誠を誓う

DIVAに伝わる呪術を唱えると変化する様である

特に幼き子供の変化は驚くものであった


そしてアマテラスの魔術は星の様に輝き治癒する能力がある様だ

ミラのDIVAセレーネの心にそうしていたのをよく目にした

この者がベガ、アルタイル、ミラ、シリウスの安寧を導く者であるとセレーネは申しておった

しかし、そう上手くは行かん様でもあった

先日、魔王ルシファーと名乗る者がアマテラスの部屋に入り込み

「挨拶に来た」

とだけ告げ暗闇に消えて行ったと申す


それ以降それぞれの国に不穏な影がひそみ、ブラックホールと共に魔物が至る所に現れ王国軍や神官は忙しくなっておる

ーーーーー



ひと通り読んでいるとノックと共に声が聞こえた


「セイラ殿…今よろしいか?」


その声の主を見るとひびき殿下が立っていた

サラッとした髪の下にある涼しげな瞳はセイラを見ていた


「殿下!あ…あの…昨夜はご夕食に出席出来ず申し訳ありません…」


「いや、急な事が立て続いて疲労が出たのであろう

致しかたない

セイラ殿…いや、セイラと呼んでも構わぬか?」


「はい、殿下」


「私の事は響と呼んで欲しい」

そう言ってセイラに近づき隣に座った


「はい、響様」

彼の行動に緊張が走るセイラは背筋を伸ばした


「正直に申すが…

私はそなたがどんな人なのか知りたい

どんな日々を過ごしていたのか聞いてみたいのだ

こんなに美しい人がどうやって密かな人生を歩いていたのか…私が見つけていたら、苦労させる事も無かったであろうとも思う」

響は前髪で少し隠れたセイラの瞳を見える様にそっと耳にかけた


セイラは美しい王子に目も合わせられずにいた


「わ、私の人生はお話しできる様な日々では無かったです…妖怪や魔物の様に思われていましたから

きっと響様も私に気づかない程だったと思いますよ」


「いや、それはない

君が私の…いや僕の初恋の人なんだ…セイラ」

そんな嘘の様な事を言う響にセイラは首を傾げ頭には疑問符がでた


「初恋…

大変失礼なのですが、どこかでお会いした事がありましたか…?」

流石に過去に国の王子様に会ったのならば覚えている…

それに民衆から容姿端麗だとあれだけ人気があればうといセイラでも分かるだろう

そう思っていると彼はセイラの読んでいた本を指差した

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