第22話⭐︎変わらぬもの変わるもの




「セレーネ様…」

ポツリと声を上げたカムイの腕の中にいるセイラに皆の目線が集まった


「そうだよお嬢ちゃん…いや、スピカのDIVAアマテラス様と呼んだ方がいいかねぇ?」

そう優しく微笑みながら話す飛鳥にセイラは嫌だと言う様に首を振る


「はっはっは!今はまだお嬢ちゃんだねぇ

つい最近ミラはDIVA様が見つかってねぇ、来週にここへ挨拶に来る予定だったらしいのだが

月の心が光ったことで300年振りにスピカにDIVAが現れたと知らせが届き、慌ててこちらに向かっているようだ。明日の朝には到着するとの連絡があったんだよぉ


遥か昔、このスピカとミラは貿易が盛んで国同士もDIVA同士も仲が良かったみたいでねぇ…

まぁ、これから色々知っていけばいい」

飛鳥が話すうちにセイラは興味を惹かれて、カムイの腕を手で押さえ彼女の顔をしっかり見ていた


「一つだけ教えてください。月の心とは何ですか?

ここの本は沢山読みましたがその様な話は見た事がありません」

そうセイラが言うと殿下が話し出した


「その事はここでおおやけには話せぬ…

多くの民が知らぬ話なのだ

そろそろ城へ飛ぶぞ

飛鳥、お前に後の騒ぎを任せる。運転手に事情を話し車で戻れ」

そう言って響殿下は床に手をついた

すると床に魔法陣が現れ白く光りだし、少し風が巻き上がると“シュッ”と音をさせ4人の姿が消えた


「任せるってこんなマジックみたいな出来事をなんて言い訳するんだい

人使いが荒い王子様だねぇ」

そう言って飛鳥が振り返り図書館の入口を見ると、そのマジックを見た民衆があんぐりと口を開き固まっていた


「いっそ放っておくか」

面倒になりそう呟いた



ー§§§ー



ースピカ王国城内ー



転移した場所は懐かしい城の中だった


「もう10年以上はゆうに経っているだろうに…あまり変わっておらんな」

そう言うと腕にしがみ付いていたセイラが顔を上げてキョロキョロとして聞く


「ここをご存知なのですか?」


「ああ、ここはスピカ城内の客間…俺の部屋だった場所だ。拾われてから5年はここで暮らしていたからな」


「フッ、よく覚えている事よ。

父がこの部屋はそのままにしろと言うので掃除する以外は触っておらん

急に出て行ったお前を父はずっと待っておったのだぞ」


「俺はスピカ王族の者ではないからな

息苦しかったんだ…

ここで頼りにされるのは響、お前だけで十分だ

出生も分からない上に記憶もない俺はここにはいらない…お前もあの時目の上のタンコブが取れてスッキリしただろう」

そう少し皮肉めいて笑った


響は返事もせず冷たい眼差しを俺に向けていた



「お二人とも…セイラ様がお困りの様ですので、いがみ合いはその辺にしてください

今は多くの事でお疲れでしょうから一度ご休憩に致しましょう

またご夕食の際に国王陛下ともご一緒して頂けますか?」

そうセイラに話す神官の春日はDIVAの魔力を見るだけあってセイラの心が解る様だった


「はい。すみませんが今は疲れてしまって…

少し横になっても良いですか?」

そう申し訳無さそうに頼むセイラは顔色が悪かった


「気づかなかった…すまない」

と言うと彼女は儚げに笑いソファに座り目を閉じた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る