第21話⭐︎腐れ縁




“さっきより外が騒がしいな”

そう思いながらもこの眼鏡の持ち主から目が離せないでいた

左右の瞳の色が違い、一方は琥珀色こはくいろでもう一方はその色の中に桃色の花が咲いている様に見える

雫をポロポロと流すそれは何とも美しい

見目麗しい異国風な容姿は王国に代々伝わる、DIVAの伝記に描かれているものにそっくりであった

“ミラのDIVAに少し似ているがこの者は花の様に可憐な美しさだ”

その考えをうち消す程外の騒ぎが大きくなり耳障りになった



「セイラ!…セイラ!!」


何やら酷く騒ぐ者がいる…不快に思い入口を見るとあまり会いたくない奴が立っていた



ー§§§ー



「あぁ、どうやら下町の方の国立図書館に向かえと神官が運転手に言うのを聞いた奴が居たみたいだぜ」


そう若者に聞いてからトラックのアクセルを踏込み全速力で向かった

図書館の前に辿り着くと、王国の黒塗りの車がありその周りや図書館の入口は多くの人で埋まっていた


「殿下がいらっしゃるの?」


「きゃーなんてカッコイイの?」


「あれがDIVA様なのか?よく見えないな…」


様々な声があり大事になっているのが分かる

“この人混み…セイラは大丈夫なのか…

あれはセイラ!?”

そう思い名前を呼び肩に手をかけるが人違いであった


“何処に居るんだ…もしかして図書館の中か?”

しかし中に入りたくても殿下とDIVA様を一目見ようと入口はごった返している

仕方が無いと意を決して声を上げた


「すまない!中に用があるのだ。通してくれ」

そう何度も繰り返しやっと入口に辿り着いた

中を見やると奥の方で男2人に囲まれた女が小さくなり泣いているように見える

よく見るとその女はセイラであった


「セイラ!…セイラ!!」

思わず大きく名前を呼び彼女の元へ近づく


「セイラ何があった…大丈夫か?」

そう横に立ち肩に触れると彼女は大粒の涙で顔を濡らし酷く悲しそうな顔をしていた


「私は、私は…どうすれば…カムイさん」

そう言いながら泣きじゃくり胸へ飛び込んでくる

小さくなり震える彼女を守りたくてギュッと力を入れて抱きしめた




「久しいな…カムイ」


その声の主を見た

“何年振りに会ったのだろう”

そんな事を考えながら思わず刺々しい声で尋ねた


「何があった…何故彼女が泣いている」


「彼女が我らが待ち望んだDIVA様なのだ…そしてお前は毎度DIVAに関連がある数奇な運命なのだな」

そう言って笑う男。どうも昔からこの態度が気に食わない…そう思いながら男が言った言葉を理解する


「セイラがDIVA?それは本当なのか響!?」


「あぁ」


嘘の様な言葉に驚き胸に顔を埋めるセイラの頭を撫でた


「失礼ですが、こちらは皇太子殿下ですよ。呼び捨てとは何と不敬な…」

響の横にいた男はそいつの前に立ちこちらを睨みつけた


「いいのだ、春日

久しく会ったがこいつは子供の頃からの腐れ縁だ」


「そうでしたか、大変失礼致しました

私は神官の春日です。お見知り置き下さいカムイ殿」


「あぁ、ところでセイラがDIVAであるならここじゃまずいぞ…外は凄い人だかりだ」

そう言うと響がこうなったら仕方がないと話し出す


「カムイ、お前もセイラ殿と知り合いならば今すぐ城へ来い…

ここの民の者は驚くだろうがこうも人が集まれば身動きもとれん

強引だが転移魔法で飛ぶ」

そう言うと何処からか小さな婆さんが話に割り込んで来た


「響坊ちゃん大変だよ…今ミニテレホンに陛下の側近から連絡がはいってねぇ…

ミラのDIVAセレーネ様が星船でスピカへ向かっていると…」

その婆さんの言葉にセイラが顔をあげ驚いていた

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