第18話⭐︎行きつけの図書館




次の日いつもの様に2人は朝食を食べ、カムイはハンターの仕事へ、セイラは国立図書館へ出掛けた


外に出ると何やら周りの住人が騒いでいるがよく聞こえず、そのまま図書館へたどり着いた。数人いる利用者から離れたいつもの窓際の席に座り少し一息つく


「さっきの騒ぎは何だったんだろう…」

そう思いながらもとりあえず前回の続きから調べようと、バッグからノートとファイルを出して中をを見るが入れたはずのメモ書きが見当たらない


“うそ…ない!いつ落としたのかしら…

変な事書いてなかったかな?…

うわぁ…ちゃんとノートに書けば良かった”

読んでいるページを忘れない様にと、メモに走り書きした事があだとなった


“ん〜、誰にも見られてない事を祈ろう”

そう思う事にして作業を再開する


元々セイラが幼少期の頃からこの王都にある国立図書館に足を運んでいたが、こうして図書館で調べる物はDIVAの事や国の事、周りの星々の事だけでは無かった

最近は特に昔の記憶を無くしているカムイの為に何か役に立ちたく思い、異国の言葉で書かれた本を中心に懸命に調べ読み解いていた

簡単な文字は読めるが、やはり古書やかしこまった本を理解するのは難しく、本1冊読むのに1ヶ月かかる事もあった


しかし古書を読み終えるといつもある矛盾にぶつかる

ここの図書館にある本は大体300年前迄の歴史しか知ることができないのだ

DIVAの歴史はもっと古くからあるであろうし、王族の歴史も1000年を超えていると記載されているが…

そして尚且つ歴史古書は秋星ミラの文字で書かれた物が多く、他の星の本が少ない為歴史を比べられない


今読んでいる異国の古書も同じで当たり障りの無いスピカの歴史が書いてあるだけ…

「ん〜」

うなる声が大きく出てしまい自分でびっくりした時、声をかけられた


「お嬢ちゃん、また会ったねぇ」

その聞き覚えがある声の主を見ると数日前に会った小柄な老婆であった


「あ、お婆さん。おはようございます」

そう挨拶すると

“おはよう”と返ってきた


「気になったんだがお嬢ちゃんはここで何を調べてるんだい?」

そう突拍子もなく質問され、思わず変に含みを持たせて答えてしまう


「あの、えっと…DIVAの歴史とその他諸々を…」


「今時、DIVAに興味がある人間も珍しかろう

DIVAの何が知りたいんだい?この老ぼれに力になれる事があるやもしれないから言ってみな」

そう言い胸をドン!っと叩いて笑う彼女を少し頼もしいと思い、つられて笑った


「そうですね…

実はここの図書館には、300年程前迄のスピカの歴史古書はあるのですがそれより以前の本はほとんどなく…多くの疑問が残るのです

特にDIVAにまつわる本は詳しく書かれた物はなく、あっても異国の物ばかり…

この“5人のDIVA”という異国の本もそうなのですが、秋星ミラで書かれた本の様で…」


「あぁ、それは40年前に私の婚約者もそう言っていたねぇ


調べれば調べるだけ空白が生まれ矛盾が生じると…

しかも彼は神官だ…一定の知識があるのに確信には辿り着けずにいたんだ…お嬢ちゃんみたいにねぇ」

そう言い彼女は小さなメモ書きを渡す


「あっ!これは…」


「その本に挟まっていたよ


その紙のことは他言はしてない

DIVAの詳しい物事やポラリス様の事も…王族以外の人々はあまり知らないことだからねぇ」


「じゃあ、お婆さんは王族の方なんですか?」

そう驚いて聞くと彼女はニコッと微笑み

“昔はねぇ”と一言で片付けた




そうして話し込んでいると何やら図書館の入口が騒がしい

“何があったのだろう”と見てみると1人の男性と目が合った

彼は驚き視線を外さないままこちらに向かってくる

その彼の後ろには、王族衣装を身に纏った何処かで見た事があるような男性も入口からこちらを見ていた

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