第15話⭐︎クリスタルビーチ
“セイラに嫌な思いをさせてしまったな”
そう思いながら車を走らせる
緊張していたと言っていたが、あの婆さんの孫に嫌悪感丸出しで睨まれていたのが堪えたのであろう…
セイラの過去を知っている身からすれば、あの様な思いをさせない為に守ってやりたくて一緒に暮らしているのに…
セイラは極度に人の目を気にしている
俺からすれば宝石のように神秘的な瞳をいつも隠し、小動物の様に怯えている彼女は初めて出会った時の様に見えて切なくなる
いつか過去を乗り越えて心から笑える時、俺の隣で一緒に未来を歩んで欲しい…
その欲望は今のセイラには重荷になるかもしれないと、グッと堪え窓の向こうの海に興奮するセイラを見つめた
「さあ、着いたぞ。ここがクリスタルビーチだ」
「うわぁ!本当に…凄く綺麗…」
車の中からでも分かるキラキラと美しい穏やかな海と真っ白な砂浜に、窓を開けて少し顔を出す彼女は今にも飛び出しそうに見えた
「カムイさんなんて素敵なんですか!ここがビーチですか?あのエメラルドグリーン見て下さい!宝石みたいです!」
そういいながらサンドウィッチが入ったバスケットとシートを持ち、早く近くで見てみたい気持ちと戦っている様に見えて笑ってしまう
「海は逃げないから焦らなくて大丈夫だぞ
ビーチまでの階段は足を取られて危ないから気をつけるようにな…手でも繋いで行くか」
そう言って手を差し出すと彼女は恥ずかしそうに麦わら帽子を被り控えめに反抗した
「わ、私はもう子供じゃ無いので大丈夫ですよカムイさん。それに恋人同士だと誤解されてしまったら…」
「誰もいないぞ、セイラ」
そうクスクス笑いながら周りを確認して言うと
“でも”と続きを訴えそうなのを遮った
「それに俺はセイラを恋人と思われるなら嬉しい
だからほら…海も待ってる行こう」
そう言ってバスケットを奪い真っ赤になった彼女の手を取った
静かにゆっくりと急な階段を降りる
最後の段を降り切って帽子を後ろへずらし前を向いた彼女は、キラキラと瞳を揺らし感動して声を上げた
「とても綺麗です
これがビーチ…本当に水晶の様です…」
「ああ、ここは穏やかな波と海の色そして白い砂浜が相待って“クリスタルビーチ”と呼ばれている
1度セイラに見てほしくてな」
「遠くから見る大きくて偉大な海と全く違う…優しい波音と静かに押し寄せる波が宝石のようです…」
潤んだ瞳でこちらを向き
“本当にありがとうございます”と彼女は礼を言った
海が最も輝いて見える場所でシートを敷き、セイラ特製絶品サンドを食べながらしばらく海を見ていた
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