第14話⭐︎思い出の味
出発してしばらく経ったがカムイさんと私は静かだった
移ろい行く景色を見ながら妙に緊張が走る
“何か話さなきゃ…えっと…”
そう考えていると低い声が聞こえた
「出鼻からくじかれてしまったな…
セイラ、気を使わせてすまない。ちょっと待っていてくれ」
そう言って車を道路の端に寄せ、歩道にある自動販売機に向かって行った
しばらくしてカップを2つ持って帰ってくる
「セイラは朝食べてなかったから、カフェインは余りよくないだろうと思ってコーヒーは辞めておいた
それを省いたらミルクココアしかなくてな…」
そういって申し訳無さそうに笑い、冷たいミルクココアを渡してくれた
「いえ!私とした事が!!
カムイさんにそんな気を使わせてしまってすみません。眼鏡をかけていなかったので緊張してしまって…今はもうカムイさんしか素顔を知りませんし…
なので落ち込んでたとかそう言うのじゃないので、全然気になさらないで下さいね!
ミルクココアもありがとうございます。とっても嬉しいです」
言い訳の様に一気に話してしまい言い終わると少し息が上がっていた
「セイラの顔が見れてよかった
ずっとその大きな帽子を被っているから顔が見えなくて、つい気にしてしまった」
そうニコッと話すものだから私はハッとした
「確かに車の中でしたらカムイさんと二人きりなので、被る必要ないですね」
そう言って外すと
“その方が嬉しい”と彼は少しはにかんでいた
走る車の中でセイラはポツリと言った
「カムイさんはいつもセイラの好きな物を選んでくれます
私にとってココアは大切な思い出の1つなんです
とても久々に飲みましたが、やっぱり美味しいですね
カムイさんの記憶はまだ戻られてないですが、同じ様に好きな飲み物や食べ物、何だか懐かしい気持ちになる物はありますか?」
「小さな頃の好きな食べ物などは解らないが、今はセイラが作る食べ物は全部美味しいし好きだな」
そう言いながらうんうんと頷くカムイさんに
“聞きたい事が違う”と訴えようとすると思い出したかの様に話し出した
「だが、スピカの
前に何度も変わった夢を見る話をしただろう?
その時にもなぜかティーテーブルの上に緑のお茶があったんだ…あれは多分緑茶だと思う」
「記憶を失う前に緑茶を飲んでいたかもしれないってことですね…でもカムイさんはスピカの者には見えませんし、いつ緑茶を
「ああ、今の記憶にティーテーブルで優雅に緑茶を飲んだ覚えはない
一番古い記憶は10歳の俺が目を覚まし起き上がった時に、王国の医務室に居た事だ。海岸に倒れていた所を王族騎士が助けてくれたみたいだ…」
「海岸…
もしかして今日行くクリスタルビーチっていうのは…」
「あぁ、俺が倒れていた場所だ」
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