第9話⭐︎囚われる心1




ーその日の夜ー


街は暗く寝静まり、虫と夜鳥の歌声が響く


“また不思議な夢をみた…”

そう思いながらまだ暗い窓の外を見つめ起き上がる

水を飲もうとゆったりとした足取りで自室からキッチンへ向かい、フリッジからボトルに入った水を取り出し口に含む

その時、セイラの部屋からドスンと鈍い音がした

“もしや…”

と思い慌ててセイラの部屋へ向かい耳を立てた

またドタッと音がする


「セイラ?大丈夫か?」

とノックをしたが返事はない

“入るぞ”と返事も待たず扉を開けると、そこにはベッドの下で倒れ苦しそうに息をするセイラがもがいていた


「セイラ!!!!」


そう叫び慌てて駆け寄りセイラを抱き上げる

どれぐらい苦しんでいたのだろう…顔は涙で濡れ、荒れた呼吸で口は乾燥し、一生懸命に息をしようと俺の服を引っ張っている


「セイラ!薬は何処だ…飲んだのか?」


そう言いながら毎日ベッドサイドに置いてある薬がない事に苛立ってしまう


苦しみながらベッドに手をかけようとするセイラを見て、ぐしゃぐしゃになっている布団をめくった


寝ている間に発作に襲われ慌てたのか、布団の中に薬が散乱していた


「セイラ、すまない」

そう伝えて薬を集め横に落としたボトルを拾う

水と一緒に口に含みセイラに口付けた

ゆっくりゆっくり飲み込むセイラを手で包み、落ち着かせる様に優しく撫でた



しばらく経つと薬が効いてきたのか徐々に呼吸が落ち着いてくる

セイラを抱き上げてベッドに寝かせると涙で濡れた瞳を見せた


「カムイさん…ごめんなさい…またご迷惑を…」

消え入る様な声でそういう彼女の涙を拭う


「気にするな…迷惑などと思っていない

セイラが眠るまでここに居る」

そういうと安堵した表情をし俺の手を握った



彼女は夜になるとこうして発作に襲われる時がある

“まだ過去に囚われているのか、セイラ…

どうしたら救い出せる…”

そう思いながら眠りについたセイラの頬に触れた

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