第6話⭐︎秋星ミラのDIVA セレーネ




その頃を思い出してか少し白く濁った瞳をキラキラさせ彼女は懐かしそうに話し出す




秋星ミラの空は妖艶な色をしている

日々色が移り変わり紫色にも桃色にも見え、ある時は緑や青も入り混じる

そこは朝でも月が見え淡く色付く空にとても美しく映えていた

ミラには大きな大陸はなく、王都がある大地以外は島国であった

そこに生まれるDIVAは強固な結界を張ることができる

代々伝わる結界を紡ぐ歌をセレーネが歌う事で、星に邪悪な者や魔のものを寄せ付けなくする


秋星ミラだけが結界を張る理由は、ミラが位置する場所から数光年離れた場所に魔物が巣くう星サターンがある

その星の周りにはいつも暗黒星雲が渦巻き、姿形を確認出来た者は居ないに等しい

しかしサターンからは妖艶に輝くミラが確認できる様で、突如現れるブラックホールから魔物が度々来るようになった

そこから何百年もミラは結界を張り、DIVAが見つからぬ間は神官や王国軍が現れる魔物と戦っている


ミラ王国はいくつもある島国を統治する難しさやセレーネ様を何としても見付けるべく、島一つ一つに関所を置き島民や出入りする者全て管理するように出来ている


「だから私も入国するのに自分の証明書提示や審査に丸1日かかったよぉ」

記憶を思い出し笑いながら言った


「セレーネ様をどこで拝見されたのです?」

セイラがそう尋ねると記憶をさかのぼりながら楽しそうに話しだす


「あれは王都についてしばらくすると、セレーネ様が城下町に降りてきて小さなコンサートを開いてくれてねぇ」


「コ、コンサート??DIVA様が?」


“あぁ”

そう呟いて思い出に浸るかのよう目を瞑る


セレーネ様は白い肌にアメジストの様な色の髪と瞳を持った、それはそれは絶世の美女だったと言う

歌声は囁く様な落ち着いた声で、聴いていて子守唄のように安心感が生まれた

彼女が歌うと空気が澄み渡り優しいそよ風が吹き抜ける

近くの海岸から水の弾ける音と共に神秘的な声が聞こえ、そちらに目をやると何十頭ものイルカが飛び上がり歌声を響かせていた

イルカ達はダンスをしながら国民と一緒に歌を聴いていた


「あの人も実在したセレーネ様を見て泣き、なかば諦めかけた心を消し去り奮い立たせていたよぉ」

そう言う彼女はどこか寂しげに見えた

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