第2話⭐︎春星スピカの悲しきDIVA 1
神官の竹之内が優美を見つけた時、彼女はもう22歳だった
初めて見た彼女はボロボロで腕に錠をされ、何かから逃げていた
“なぜこんな所にスラムの人間が?”
と気になり追いかけた
近づくと分かる、彼女から出る強い秘めた魔力に…
すぐに“これがDIVAだ”と分かるほどに
泣きじゃくっていた彼女は初めこそ俺を追っ手と思い、明らかに制御出来ていない魔力を力一杯ぶつけていた
無効化し容易く近づくとやっと王宮の人間だと認識し助けを乞う
「おじさんが…おばさんが……私の為に…」
泣きながら声にならず
「ひとまず今は安全な場所へ逃げましょう」
手を握り促すと彼女は少し正気を戻して頷いた
転移魔法でその場から飛ぶと彼女は目を見開いて涙を止め、自分が何処に居るのかキョロキョロとしている様だ
「スピカ王国の城内、我々神官の執務室です…DIVA様」と伝える
「あの…助けて頂いてありがとうございます
私の名前は優美です…デーバさんとやらではないんです…すみません」
自分を人違いで救ってくれたと思い込み悲しい表情に戻る彼女に訂正をする
「いえ、貴方は我々が20年以上探し求めていたDIVA様です。それよりも先程のお話は…」
そう言うと彼女はまたポロポロと涙を落とし、ゆっくりと話し出した
ー§§§ー
優美が育ったのはスピカの外れにあった地方都市…竹之内が産まれる前からもう都市などと言えぬスラム街だった
2歳の頃に母親を病気で亡くし父もおらずスラムで生きてきた
そんな自分に手を差し伸べてくれたのが、生前の母が働いていた小さな食堂の夫婦だった
母を子供の時から見てきた二人は、未婚の母になり死に物狂いで働き苦労している様子に我慢できず
“お金はそんなにあげられないけど助けになれば…”
と働くかわりに毎日ご飯を食べさせてくれたのだ
母が亡くなっても2人は我が子の様に愛してくれた
皆んなと違う容姿や内気な性格が原因で酷いイジメに合い、人生に打ちひしがれ何度も母の元へ行きたいと1人で泣く優美に向き合い、絶対にいつか報われると生きる価値を教えてくれた親同然の恩人
その大切な人たちが…20年一緒に暮らした家族が…目の前で銃殺されたのだ
そして残された優美は顔が良く見えない男2人によって、
強引に馬車の荷台に押し込まれ意識を失った…
どれぐらい乗っていたのだろう、気づくと微かに朝を知らせるラッパの音がする…
“もしかして王都の近くまで来てる?”
そう思い体を起こした
家族同然だった2人の最期を思い出し恐怖に震え、助けてと祈る優美に話し声が聞こえてきた
しかし何処の言葉なのか何を話しているのか分からない…
…はずだったが、風が吹き木々や葉っぱがたなびくと次第に話が理解できる…
いや、風や木々が教えているようにも感じる
「〜〜ってことだろう?
「ああ、
確かにジャック様が言っていたのはコイツだ…だが魔力も強く感じないが…」
「コイツがあのお方の求める姫巫女ならなんでスラムなんかに…」
“私を誰かに売り飛ばすってこと?
でも何故言葉が理解できるのかしら…“
その瞬間ガタンッっと馬車が大きな石に乗り上げて激しく揺れた
優美を見せないよう入り口に積み上げていた荷台の荷物が飛び上がり外へ落ちていく
その音にびっくりした馬が声を上げ暴れた瞬間優美は外へ飛び出した
そこからはもうがむしゃらだった
追いかけてくる男たちは魔法で捕えようとしてくる
それをかわして初めて大きな声で
「誰か!助けて〜!!」
と叫んだ瞬間、優美に薄らと膜が張りそれが爆風と大きな音を轟かせ優美を目掛ける拘束魔法と奴らをぶっ飛ばした
優美は何がなんだか分からないまま走り出し街に逃げ込み今に至る
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