第10話 余命2日②
電車内は平日だからかあまり人が多くなく俺達は空いている席に座れた。
「ここが電車か〜意外と人が少ないね。」
彼女は目を輝かせながら言った。
「もう通勤ラッシュは終わったしな。」
「通勤ラッシュって何?」
どうやら彼女は通勤ラッシュを知らないようだ。
「通勤ラッシュって言うのはな……いわば試練のようなものだ。」
「えっ!電車内で試練が行われてるの?」
「あぁ……通勤、通学する人がこの試練を生き抜かないと駄目なんだ。」
俺は少し大袈裟に言った。
まぁ間違ったことは言ってないから大丈夫だろう。
「そんなことが毎日……恐ろしいね。」
彼女は他人事のように言う。まぁ実際に他人事なんだろうが……
「ねぇねぇ見て!凄い速度で景色が流れていく!」
彼女は外の景色を見ていた。
「そうだな。こんなに速かったら一瞬で目的地に着くよな……ほら……いったそばから。」
電車内にアナウンスが流れた。もう目的地に着くらしい。
「もう降りるの?」
彼女は少し残念そうに言った。
「あぁ……着いたな。」
俺は彼女の手を引いて電車を降りた。
乗るときとは逆だ。
自分から手を繋いで分かったんだが彼女の手は異様に冷たい。それが彼女が人間じゃないと言う事を思い出させてくる。少し悲しい。
俺はもう面倒見がよく少し天然な彼女……死神に惚れているのだろうか……それともずっと前から惚れていたのだろうか?
「どうしたの?急に黙って……」
その声が聞こえた瞬間、俺は現実に戻って来た。
「人間誰しも考え事をする時は周りを見えなくなるだろう?それと同じで俺も考え事をしていたんだ。」
「へ〜何について考えてたの?」
お前のことだよ。なんて言えるわけもなく俺は「遊園地のことだよ。」といった。
「遊園地……そうか!私達は遊園地に行くために来たんだった!電車にはしゃぎすぎてすっかり忘れてた!その遊園地ってもしかしてあれ?」
彼女は指を指していった。
「あぁ……あそこだよ。駅からも近くて最高だろ?」
「あの大きいのが観覧車ってやつ?」
「あぁそうだ。あれのてっぺんから見る景色は最高だよ。」
「いいね!」
俺達はその後、遊園地のアトラクションについて話しながら受付まで向かった。
「1名様ですか?」
受付スタッフが訪ねてくる。
「あ……はい1人です。」
「では、お会計2000円となります。」
俺の財布の3分の1が消え去った。彼女の姿が見えないことがラッキーだったな。
「ねぇねぇまず何乗る?私はあのジェットコースター?に乗りたい!」
「ジェッ……ジェットコースター?あれはこの世にあっては行けないものだ……」
そう、俺は何故だか知らないが生まれつきジェットコースターが嫌いなのだ。
だからもう既に拒否反応が出ている。
「いいじゃん!行こ〜よ!」
彼女は強引に俺の腕を引っ張ってきた。
「いやいやいやあんなのに乗ったら寿命がなくなる!」
「大丈夫だよ。まだ貴方の寿命が見えるから。」
「精神的な寿命がだよ!」
その後俺は抵抗するも虚しく、ジェットコースターに無理矢理乗せられてしまうのだった。
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