第9話 余命2日①
小鳥のさえずりが目覚まし代わりになる。気持ちの良い朝だ。俺は少し背のびをしてリビングに下りた。
リビングではいつも通り死神が朝食を作っていた。
「あっ!おはよ〜」
「おはよう。……ふと思ったんだが死神って普段どこで寝てるんだ?」
「え〜と普段は自分の空間で寝てるよ。このカマで自分の空間の中に入れるんだよ。まぁ昨日は今日が楽しみすぎてあまり寝れなかったけど……」
死神は大きなカマを振って空間の裂け目を作って見せた。
裂け目の中には部屋が見えた。便利なカマだ。
1家に1つは欲しいな。
「遊園地が楽しみで眠れなかったって子供かよ……」
「うぅ……貴方だって眠れなかったんじゃないの?」
「そ……そんなことないよ。」
「何か動揺してない?」
「してないよ……それより早く食べて準備しないと……」
「そうだね!早く行くためには早く準備をしないとね。」
その後、俺達は準備をすまして家を出た。
「まずは電車に乗るから駅に行くか。」
遊園地は隣町にある意外と知られていないところに行く。前に1回行った事があるからここにした。
「電車に乗るの!?私電車に乗るのも初めて!カマがあればだいたいどこでも行けるから……」
「そうか……だったらカマで行けば良いんじゃないか?」
「それじゃあ面白くないじゃん……そうだ!良いこと思いついた!今日1日は私を1人の人間としてみてくれない?」
「あぁ良いぞ。」
とは言ったものの少し不安なところがある。
今までは彼女の事を死神として見ていたため、何とか惚れたりしなかったが人間として見ると惚れてしまうかもしれない……惚れてしまうと傷つくのは俺なんだ。だから気をつけないとな。
「ほんと?約束だからね!」
「あぁ約束するよ。あっ……もう駅についたな。」
「ほんとだ!さぁ早く行こ!」
彼女は俺の手を引っ張って連れて行く。
今までこういうスキンシップがなかったので少しドキッとする。本当に危ない。
「ここで『きっぷ』を買うの?」
「あぁここで切符を買う。ところで人が多いところであまり話しかけかいでくれるか?俺が独り言を喋っていると思われるんだが……」
「今日は人間として見てくれるんじゃないの?」
俺は少し悩んだ。
脳内で様々な会議を繰り返した後結論が決まった。
それは、結局死ぬんだったら周りの人にどう思われてもどうでもいいということになった。
「あぁそうだったな。ごめんな……」
「いいよ。これから気を付けてね。」
俺達はその後、切符を買い電車に乗るのだった。
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