第7話 余命3日①

 午後の授業は、睡魔との戦いである。俺に眠りの波が押し寄せて来るが京香が危ないかもしれないという強い意思でギリギリ耐えている。

それを見越してか死神が


「眠いのなら寝たら?京香さんは私が見守っておくから……」


というありがたいことを言った。

それに俺は間髪入れずに頷いた。

その後俺の意識は眠りの波に取り込まれるのだった。


 「起きて……起きて……起きろ!」


京香の声だ。もう授業が終わったのだろうか……

だんだんと俺の意識が戻ってくる。

視界も同じく戻って来た。

最初に目に飛び込んできたのは京香の顔、そして次に机の上に座る死神、最後に夕日に照らされた教室。

やはり授業は終わったみたいだ。恐らくこれから帰るということだろう。帰りはさらに注意しなければならないな。


「やっと起きた……もう4時半だよ。そろそろ帰らないと……」


「わざわざ待っててくれたのか?」


まぁその方が好都合なんだが……


「まぁ幼馴染だしね……それに今日は何故か嫌な予感がするしね。」


京香の勘はよく当たる。今日は外れてほしいがそうはいかないんだろう……


「じゃあ一緒に帰るか!」


俺達は校門を出た。


「久しぶりに一緒に帰るね。」


「そうだな。最近は色々あったしな。」


京香と多少雑談を交わすが俺は警戒を怠らない。死神も警戒してくれているようだ。


「今のところ何も起きなさそうだけど油断しないようにね。」


死神が言った。

俺は首肯した。


「ねぇ皐月……小さい頃よくこの公園で遊んだよね。覚えてる?」


俺達は公園の隣を歩いていた。この公園をすぎると家の方向が違うので京香と別れていた。今日はなんとかして京香に付いていこう。


「あぁそうだな……覚えてるさ。特に京香がジャングルジムから落ちたこととかな。」


「確か……あのときも皐月に助けてもらったんだっけ?異様に速い足と反射神経で。」


「そういえばそうだったな。ここには色んな思い出が詰まってるな。」


「そうだね……懐かしいよ……あっ私の家はこっちだから……」


「いや……俺も今日こっちに用があるから一緒に行こう。」


これで大丈夫そうだ。

この道を進むと街に出る。京香の家は街を少し歩いたところだ。


「この街殆ど変わらないね~あのお店もこのお店も私達が小さい頃からあったよ。」


「そうだな。しかし相変わらず車通りが多いな。」


車にも気を付けなくてはいけない。

死神もかなり集中してあたりを見渡している。


「そうだね。この街は都市への通過点だからね。あっ家が見えてきた!」


京香は歩く足を速めた。

少し先にある交差点をすぎると京香の家だ。

俺は少し油断した。それが間違いだった。1台の車が京香の方向めがけて突進する。死神もそれに気づいたのか叫ぶ。

その叫びを聞いた瞬間、俺の足は動き出していた。

凄い速度で京香に向かっていく。

いきなり走り出したので足が悲鳴を上げている。

だがそんなこと俺には関係なかった。

あと2メートル、1メートル京香との距離が縮まっていく。それと同時にクルマとの距離も縮まっていく。

しかし、俺のほうが速かった。俺は京香を抱えて転がった――――


 私は妙な既視感を覚えた。皐月さんが異様に速い足で誰かを助けることに……何の記憶と重ね合わせたのだろうか。

まさか、10年ぐらい前の滝野皐月さんとの記憶?

でもとりあえず今は京香さんが助かったのを喜び、

皐月さんの様子を見なくては――――


 久しぶりに全力疾走をしてかなり疲れた。

そういえば一緒に転がった京香は無事だろうか。俺は京香の方をみる。京香は気絶していた。

これは病院に行ったほうが良いのだろうか?


「ふたりとも無事?」


死神が走って来た。


「京香は気絶してるが無事だ。問題は寿命だ。見えるようになったか?」


「えっ!!」


死神は目を見張った。


「どうかしたのか?まさか……まだ京香の寿命が見えないのか?」


「いや……京香さんの寿命は普通に見える……でも貴方の寿命が……残り3日になってる……」






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