エピローグ1

―――エピローグ―――




クランネル王都で起こった一連の騒乱は【王都事変おうとじへん】と名づけられた。


この騒乱によって王都の60%程度が壊滅したとされる。


王都市民おうとしみんの多くは避難したものの、住んでいた家屋かおくが倒壊したため、現在、仮設のテントで暮らすことを余儀よぎなくされている。


貴族たちも、そんな市民たちの救済に奔走ほんそうしたり、王都事変の事後処理じごしょりに追われる日々だ。






―――――クランネル王家について


王都事変において、最も打撃を受けたのはクランネル王家である。


なぜなら王都事変の実行犯じっこうはんは、王太子おうたいしであるアレックスだからだ。


アレックスが王都を破壊したことは、誰もが知っていることだ。


あれだけ堂々と【浸透声しんとうせい】によって、王都の破壊を宣言していたのだから、当然である。





王家の評価が下がることを恐れたミジェラ女王は、緘口令かんこうれいいて、火消しに奔走した。


しかし、これほど大きな出来事を隠せるはずもなかった。


なにしろ王都が瓦礫がれきの山と化しているのだ。


王都にはクランネル王国や諸外国しょがいこくからも、さまざまな人間が訪れる。


実際に訪れた旅人たびびと観光者かんこうしゃ吟遊詩人ぎんゆうしじん行商人ぎょうしょうにんなどは、王都の壊滅ぶりを目の当たりにして驚愕。


その壊滅がアレックス王子によって引き起こされたことを知り、全国各地に情報を広めていった。


当然、全国各地から批判が殺到する。


国民からの印象は最悪であり、クランネル王家の評価は過去最低レベルに下がっていった。





本来、庶民が王家を批判するなど許されることではない。


不敬であるし、度が過ぎれば処刑の対象にもなる。


ただし今回の場合は、例外だった。


アレックスのしたことがあまりにもひどすぎたために、「叩いていい」という空気ができてしまったのである。


特に、家を失った王都市民の不満や怒りは、最大級に高まっており、王家を公然と罵倒ばとうする光景が当たり前となっている。





こうなると、貴族たちもクランネル王家を擁護しない。


クランネル王家の味方をしても、巻き添えを食らって自分まで批判されないからだ。


むしろ逆に「自分は王家とは敵対している貴族だ!」とアピールする貴族も現れたほどである。


ただし王家という屋台骨やたいぼねがぐらついたことで、多くの貴族が未来を不安視ふあんししている。


生き残りをかけて、政界に熾烈しれつな争いが発生することは間違いなかった。



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