第8章383話:破壊

<ルチル視点>


私はアレックスと斬りあう。


精霊の加護を得たことにより、私の全体的なステータスがアップしていた。


おかげでアレックス相手には善戦ぜんせん―――――


いや圧倒し始めていた。


「ぐああああっ!!?」


私の斬撃がアレックスの切り裂き、大ダメージを与える。


アレックスが歯ぎしりをしながら、吐き捨てるように言ってきた。


「精霊の力を借りて、勝利を掴み取るつもりか!? なんと卑怯な女だ! やはり貴様は、唾棄だきすべき悪女だ!」


「あなただって、精霊の力を借りているでしょうに」


「借りていない!」


「いいえ。あなたの力は、イリスフォルテという精霊によってもたらされた、スヴァルコアによるもの。あなたが自分で到達した力ではありませんわ」


アレックスがもし自力で戦っていたら、私にもミジェラ女王にも惨敗ざんぱいしているだろう。


スヴァルコアによって力を覚醒されたからこそ、ここまで手強てごわくなっているのだ。


「イリスフォルテだと? 知らん名前だ。嘘をついて、混乱を誘おうとするな。正々堂々せいせいどうどうと戦え!!」


しかしアレックスは、イリスフォルテの手のひらの上で踊っていることに気づいていない。


哀れな王子だ。


だが同情する気は起こらない。


私は剣を振る。


アレックスを斬りつける。


「ぐうっ!!」


苦悶くもんの表情を浮かべるアレックス。


「これでトドメですわ!」


私はそう宣言して、大きく斜めに剣を振り下ろした。


私のトドメの一撃。


それがアレックスの胸をななめに切り裂く。


「ぐあああああああああぁっ!!?」


ひときわ大きな悲鳴をあげたアレックス。


次の瞬間。


アレックスの身体にまがまがしいオーラがあふれ出した。


そのオーラが、ちょうどアレックスの頭上へと集中する。


アレックスの真上まうえに位置する空中に、丸い銀色の球体が現れた。


私はその球体が何なのかを、察する。


(おそらくアレが、スヴァルコア……)


アレックスを暴走させた元凶。


つまりアレを破壊すれば、アレックスの暴走は止まるはずだ。


私は深呼吸を一つ。


地を蹴り、跳躍ちょうやくした。


「ハァアアッ!!」


ジルディアスソードによる斬撃を、スヴァルコアに放つ。


するとスヴァルコアにぴしり、と亀裂が走り―――――


パリンッ、と音を立てて砕け散った。


まがまがしくよどんだオーラが、霧散むさんする。



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