第8章338話:準備

「で……そのジルガーンってのはどこだよ」


とレオンが聞いてきた。


「王都の外ですわ。ただその前に、着替えなくてはいけませんわね」


「着替えですか?」


とエドゥアルト。


「普通の衣服で戦うわけにはいきませんもの。相手は魔王……とまではいきませんが、相当な化け物ですわよ。きちんと準備をしていかなければ、攻撃がかすっただけで即死もありえます」


するとフランカが尋ねてくる。


「でも私たち……そんなに強い装備を持っておりませんよね」


「ええ。ですから作りますわ」


「作るだと?」


レオンが困惑顔こんわくがおを浮かべた。


「まずはわたくしのティールームに向かいますわ。そこで装備を揃えて、着替えをおこない、そのあとでジルガーンのもとに向かいましょう」


「そんな悠長ゆうちょうなことをしていていいのかよ」


とレオンが突っ込んできた。


エドゥアルトがレオンに向かって述べる。


「ルチル様は、大局的に物事を見ておられます。ここは従っていただけませんか」


「従わないとは言ってないだろ。……着替えるなら、さっさといくぞ」


とレオンは言った。


私たちはティールームに移動する。


ティールームにて、私は即効で装備を作った。


アイテムボックスに必要な素材は全て揃っていたので、あとは錬金術でパパッと完成させた。


製作したのはAランク装備たちである。


これを全員に着てもらう。


――――着替えをおこなう。


レオンにはAランク大剣である【ファドラーソード】


それから紅色べにいろ鎧装備よろいそうびを。


ラクティアにはAランク杖である【聖峰せいほうの杖】


それから蒼色あおいろ法衣ほういを。


そして私はAランク剣である【グレイスワンダー】


それから翠色みどりいろ戦衣せんいを。


エドゥアルトにもAランクロングソードとタキシード装備を。


フランカにもAランクバトルアックスと軽装の鎧装備を。


それぞれ与える。


全員、着替え終わった。


「みなさん、似合っておりますわね」


私は微笑みながら告げた。


「Aランク装備……私に扱えるでしょうか」


とラクティアは不安げだ。


「たしかに重いな。これだとろくに戦えないんじゃないか」


とレオンも告げる。


まあ、みんな実力的にAランクではないからね。


Aランク装備などを身につけても、全く使いこなせずに終わるだろう。


私は説明する。


「もちろん対策を考えておりますわ。これを飲んでください」


私はバフポーションをレオンとラクティアに差し出した。


「これは?」


「ステータスを一時的に引き上げるバフポーションですわ。飲めば強くなります」


言いつつ、私が最初に飲んだ。


「そういうのもあるのか。わかった、飲めばいいんだな」


とレオンが飲む。


ラクティアも飲んだ。


あとエドゥアルトとフランカにも渡して飲んでもらった。


「すごい……力があふれてきます」


とラクティアが驚いたようにつぶやいた。


レオンも目を見開いている。


「たしかに……これはすげえな。さっきまでかなり重かった装備が、めちゃくちゃ軽く感じるぞ」


興奮気味に言うレオン。


「これ……以前よりもバフの効果がパワーアップしてますよね」


とエドゥアルトが気づいたように言ってきた。


私は頷く。


「もちろんですわ。バフポーションは日々改良を続けておりますから」


「さすがルチル様です!」


とフランカは賞賛した。


「では、準備は整いました。いきますわよ!」


私が号令をかける。


全員がうなずく。


私たちはティールームを出て、ジルガーン討伐へと向かうのだった。


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